EP.3 風の日のドラマ~Good-bye to yo~

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🎵愛なき世界に影呼ぶSunshine🎵 早朝の市街 🎵雲は流れ時代は去く,Woh🎵 『…………』 🎵陽光浴びて失くしたあの記憶は🎵 行き交う人々もまばら 🎵母がくれた子守り唄🎵 ジャージ姿でジョギングしている中年男性 🎵Ah,今の今まで雨は強引ぎみなAction🎵 犬を連れながら散歩する主婦 🎵眠らぬ都会の人生は暗い🎵 信号待ちに時計を気にしながら落ち着かない高校生 🎵傘も指さずに濡れた少年の日にReflection🎵 次々と流れていく人々 次々と流れていく風景 🎵人間は愛求め行く🎵 助手席のヒロシは何に気をとられているのか―― ただぼんやりとウインドウ越しを見つめている 🎵New stage for all the people🎵 『…………』 🎵時代の流れの真ん中で🎵 『なぁ……誠』 🎵One dream creates tomorrow.🎵 『――ん?』 🎵青い御空の下🎵 『なんか久しぶりだなぁ~』 『………?』 『こうやって……ゆったりしてるのって』 『…………』 🎵暗いビルの谷間に揺れ咲いた🎵 『なんかさぁ……しみじみするよなぁ』 『…………』 🎵花に胸が痛むなら,Woh🎵 『俺も年かなぁ――ハハ』 🎵過去を憂い嗚呼世代を越えて……🎵 『ま~だこれからだろが!』 『フッ……そうかぁ?』 🎵人間の夢は叶うだろう🎵 『ちょっとは俺を見習うんだ!』 🎵Ah,刹那なままに都会は強引ぎみなDestruction🎵 『誠の……?どんなとこだよぉ』 🎵野暮な未来を待ってなさい🎵 『元気があれば何でもできる!とりあえず当たって砕けろ!ってとこだ!』 🎵合わせ鏡の中で平和の幻影はReflection🎵 『お前の元気はホントどっから来るんだよぉ』 🎵闇に忘られし涙🎵 『そりゃあ~愛するマイワイフだろ、あとマイサン、マイドーター……』 🎵Don't change the way you wonder.🎵 『相変わらず発音が悪いなぁ~』 🎵己の罪に懺悔して🎵 『大事なのはマインド!マインドランゲージ!』 『意味わからん……』 🎵Don't cry tomorrow's yonder.🎵 『……でもヒロシ!《家族》っていいぞ!』 🎵夜明けのベルが鳴る🎵 『…………』 『…………』 🎵Ah,今の今まで雨は強引ぎみなAction🎵 『――そろそろ考えてみたらどうだ?』 『…………』 🎵物質に癒された人生は暗い🎵 『どんどん老け込んじまうぞ!』 🎵傘もささずに濡れた少年の日にReflection🎵 『フフ……そうだなぁ』 🎵現在は亡き友達の顔……🎵 『…………』 “あれからもう4年も経つんだな” 2005年6月―― 栞が亡くなり2日後 彼女の葬儀の日 名古屋市内のバス乗り場 葬祭場へ向かうバスがやって来る―― 〈カツンカツン〉 次々とバスのステップに足音が刻まれていく そんな中、最後に残った足は、未だにそのステップに上がる事を躊躇していた 『これで皆さんお揃いですか!?』 運転手がその取り残された男に呼びかける 『いや、あともう一人なんだ!もう少し待っててもらえないかな』 そう応じる男――誠はそわそわしながら周囲を見渡す “ヒロシ、マジで来ないつもりかよ!” 焦る気持ちが段々に膨れ上がる すると―― 『――誠、悪い悪い、遅れちゃって……』 『―――!』 黒い礼服に身を包んだヒロシが、いつの間にか誠のすぐ背後に駆け寄っていた 『何?――その驚いた顔は?』 『い、いや……ま、待ってたんだ』 あの日以来のヒロシ―― いざ現れると動揺してしまう 『行こうか――』 『…………』 バスに乗り込むヒロシの後ろ姿―― その何の変哲もない光景に言い知れぬ違和感があった バスの車内―― 窓側の奥の席に座るヒロシ 誠はその隣に座る 発車するバス 動き始めると――車内は小声ながらも人々の声が行き交う 『久しぶりですね』 『どうも、どうも、ご無沙汰してます』 『いやぁ~まさか、こんな事に……』 静寂を拒むかのようにあちらこちらから声のやりとりが飛び交っている 『…………』 『…………』 ヒロシと誠―― 二人は押し黙ったまま 『…………』 『…………』 “ヒロシ……大丈夫だったか?” ありふれた言葉しか浮かんでこない 誠は自分が歯がゆかった 話すキッカケを見失うままに―― そうこうするうちに 『誠、コーヒーでも飲む?』 話し掛けてくるのはヒロシのほう―― 『あっ……悪い……』 差し出されたコーヒーを受け取る―― 〈カチャ!!〉 〈ゴクゴク〉 『……………』 『……………』 『ところで、ヒロシ……一体……何してたんだ?』 あの日 病室を飛び出していったヒロシ その行き先をずっと知りたかった 『………横浜に行ったんだ』 『………横浜……?』 予期せぬ答えに驚いた 『そこに行ってさ、分かったんだよ』 『…………?』 『栞がいなくなる事で分かったんだ』 『…………』 『栞の全部が俺の「生きがい」なんだってさ』 『…………』 『そんな「生きがい」が見つけられたんだ……横浜でな』 『……そうか……』 『何と無く……けじめがついたかなぁって……』 『…………?』 そう語るヒロシの表情は柔らかいものだった 『やっぱり俺……こうなる事を……どこかで覚悟していたのかもしれない……なって……』 『……ヒロシ……』 その時―― 『まさかね~栞さんがね~』 すぐ後ろの席の中年女性のよく通る小声の会話 否が応にも耳に入ってくる 『まさか自殺だなんて――』 『しっ!声が大きいぞ』 そんなやりとりが誠の耳にもしっかりと入った 〈カランコロン!〉 『―――!?』 隣でコーヒーの缶が床に落ちる “ま、まさか――!?” 誠はハッとし、恐る恐る横に目をやる 『!!』 目を丸く見開き 真っ直ぐ前を見つめるヒロシがそこにいた “まだ知らなかったのか!!?” 『……………』 『……………』 それから葬儀まで二人に会話は無かった――
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