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🎵風に戸惑う……🎵
棺を取り囲むように
親族達が並んでいる
🎵弱気な僕🎵
その棺に
各々が品々を納めていく――
🎵通りすがる あの日の幻影🎵
『……………』
🎵本当は見た目以上🎵
人囲みの外からその光景を伺っている誠とヒロシ――
🎵涙もろい……🎵
『……………』
🎵過去がある🎵
納棺用の供花を受け取り納める人々
🎵止めど流る清か水よ🎵
その順番が――
誠とヒロシにも段々にまわってこようとしている
🎵消せど燃ゆる……🎵
『……………』
🎵魔性の火よ🎵
棺の中の栞
🎵あんなに好きな女性に🎵
白い花に包まれて
本当に眠っているかのように見えた
🎵出逢う夏は……🎵
チラッとヒロシに目を移す
🎵二度とない🎵
棺のほうをまばたきすらせず、じっと見つめている
🎵人は誰も愛求めて……🎵
『……………』
🎵闇に彷徨う運命🎵
誠に順番がまわってきた
🎵そして風まかせOh,My destiny🎵
供花を受け取り――
棺の前に立つ
🎵涙枯れるまで🎵
“栞ちゃん……さよなら……”
🎵見つめ合うと……🎵
そっと花を置く
🎵素直に……🎵
続いてやって来るヒロシ――
🎵お喋り……🎵
感情を抑えているのか
🎵出来ない🎵
それとも
感情を見失ってしまったのか
🎵津波のような侘しさに🎵
その表情は全く無かった
🎵I Know…怯えてる,Hoo…🎵
『……………』
🎵めぐり逢えた……🎵
“……ヒロシ……泣きたかったら……泣くんだ”
ヒロシの心に必死で語りかけようとした――
🎵瞬間から……🎵
ただ、じっと――
🎵魔法が……🎵
ヒロシは棺の中の栞を見つめ続けている
🎵解けない……🎵
『俺が悪いんです……』
『………?』
🎵鏡のような夢の中で🎵
消え入りそうな
か細い、かすれた声
🎵思い出はいつの日も……雨🎵
『……俺が……全部……悪いんです……』
“お前のせいなんかじゃない……”
『俺が栞を死なせたんです……』
目を閉じ口元を震わせながら下を向く――
〈ぽん〉
ふいに肩を叩く手
🎵夢が終わり……🎵
『……ヒロシ君、君は悪くなんかないよ……』
栞の父
🎵目醒める時🎵
『君には本当に……すまない事をした』
『…………』
🎵深い闇に夜明けが来る🎵
『さぁ……栞のために“はなむけ”をしてやってくれないかな……』
『…………』
🎵本当は……🎵
手に持つ花を――
🎵見た目以上……🎵
ゆっくりと
棺の中へ
🎵打たれ強い僕がいる🎵
栞の頬元に
その花はそっと置かれた
🎵泣き出しそうな🎵
『…………』
🎵空眺めて……🎵
花を置いた手は――
すぐに下ろされる事なく頬の上で静止していた
🎵波に漂うカモメ🎵
その頬に
触れるでもなく――
離れようとするわけでもなく――
🎵きっと世は情けOh,Sweet memory🎵
置き去りにされた
みなしごのように
🎵旅立ちを胸に🎵
残された理由すら飲み込めず
とどまっている
🎵人は涙……🎵
そんな光景が
たまらなく切なく映る
🎵見せずに……🎵
『……………』
🎵大人に……なれない🎵
――『ねぇねぇ誠さん!』――
懐かしい声が耳の奥に響く
🎵ガラスのような恋だとは🎵
――『ヒロちゃんとは、高校時代から一緒なんだよね!?』――
🎵I know…気付いてる,woo…🎵
――『バンド組んでたのって本当ぉ~!?』――
🎵身も心も……🎵
――『いいなぁ~♪私も聴きたかったなぁ~』――
🎵愛しい……🎵
――『あっヒロちゃんのボーカルじゃなくて~、誠さんのボーカル!』――
🎵女性しか……🎵
――『でもさ』――
🎵見えない……🎵
――『ヒロちゃんって……………結構モテた?』――
🎵張り裂けそうな胸の奥で🎵
――『い、いや気になるんじゃないの!ただ、なんとなく、その…参考に、ね……』――
🎵悲しみに耐えるのは……何故?🎵
棺の中の栞と――
傍らで立ち尽くしているヒロシ
『…………』
“いつも……ヒロシの事ばかりだったね……”
🎵見つめ合うと……🎵
“ヒロシを……本気で愛してたんだね”
🎵素直に……🎵
“ヒロシも……”
🎵お喋り……出来ない🎵
目の前のヒロシは、いつの間にか手にあるモノを持っていた
🎵津波のような侘びしさに🎵
『…………?』
🎵I know…怯えてる,Hoo…🎵
それは封筒――
先程、海から渡された封筒に違いなかった
🎵めぐり逢えた……🎵
『――――!』
🎵瞬間から……🎵
その封筒を
🎵死ぬまで……🎵
棺の中に納めた
🎵好きと言って🎵
『……………』
🎵鏡のような夢の中で🎵
“………ヒ、ヒロシ……?”
🎵微笑みをくれたのは誰?🎵
そして
🎵好きなのに泣いたのは何故?🎵
役目を終えるかのように
彼は棺から離れていった
🎵思い出はいつの日も………雨🎵
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