EP.1 海の日のドラマ〜素敵な未来を見て欲しい〜

3/8
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ
🎵あんなに大きな……🎵 満足そうに石畳に腰を下ろす海 🎵ドラマで始まる恋なのに🎵 膝をゆっくり抱き寄せながら曲に心を傾ける 🎵時間のうつろいは夢を待てない🎵 肩を揺らしながら―― 🎵嘘でもいいから……🎵 ‘つま先’でリズムをとりながら―― 🎵あの日の二人に帰りたい🎵 『……………』 🎵雨の音さえも何故につれないそぶり🎵 “ねぇお姉ちゃん……嬉しい?” 🎵可愛い睫毛の先まで恋焦がれてた🎵 『…………』 🎵もう一度だけ口づけして🎵 返事などない―― 🎵心酔わせた人よ🎵 心の中だけの問掛け―― 🎵あの夏の恋が……🎵 “……………” 🎵想い出にかわる🎵 今まで何度も繰り返してきた事 🎵惨めになるほど……🎵 これから何度も繰り返していく事 🎵涙でいっぱい……🎵 『…………』 🎵サヨナラはいつも……🎵 自分でも分かっている 🎵言葉にならない🎵 『…………』 何も変わらない事を 🎵愛無き……🎵 《栞 享年二十三 才》 🎵子供のような慕情🎵 目の前の墓石に刻まれた文字のように 『……………』 🎵死ぬ程愛して🎵 “でもさ……” 🎵せつない言葉で抱きしめて🎵 “いつまでも……悲しんでばかりじゃいられないもんね” 🎵願い叶うなら空の果てまで🎵 ――『はい。海に誕生日プレゼント』―― 🎵ごめんよ本当は……🎵 ――『わぁ~サザンのしーでぃーだぁ~!!』―― 🎵世界で一番好きなのに🎵 ――『このアルバムって、今日発売したんだよ』―― 🎵それが言えなくて🎵 ――『じゃあ~わたしとおんなじ?』―― 🎵涙溢れるばかり……🎵 ――『そうだね、海と同じだね』―― 🎵指折り数えた……🎵 ――『おねぇちゃん、ありがとう………あ……』―― 🎵星さえ滲んで消えた🎵 ――『どうしたの?海?』―― 🎵遥か遠く……🎵 ――『おねぇちゃんのは?』―― 🎵小舟のように🎵 ――『あっ、いいのいいの、また買うから……』 『…………』―― 🎵面影だけが……🎵 ――『?』 『…………いらない』―― 🎵揺れる……🎵 ――『……フフ……』―― 🎵あの夏の恋が……🎵 ――『いいんだよォ~海』―― 🎵想い出にかわる🎵 ――『でも、おねぇちゃんが……』―― 🎵海啼くカモメは🎵 ――『………海はいいコだね』―― 🎵答えてくれない🎵 『…………』 🎵サヨナラはいつも……🎵 ――『でも、これは海のために買ったんだから、ちゃんともらってね』―― 🎵言葉にならない🎵 ――『でも……おねぇちゃんが……』 『……その変わり、一緒に聴かせてね』―― 🎵凍える……🎵 『…………うん♪』 🎵枯れ葉のような無情🎵 “…………” 姉はいつだって優しかった 🎵秋の夜更けは悲しく🎵 どんな時でも自分の味方だった 🎵最後のキッスは……🎵 ――『おねぇちゃん、これ、なんてよむの?』―― 🎵永遠だから……🎵 ――『〈ヤングラブ〉って読むんだよ』―― 🎵これ以上……🎵 ――『〈やんぐらぶ〉?』―― 🎵恋に溺れない🎵 ――『それがアルバムのタイトルなんだよ♪』―― 『…………』 🎵あの日見た空が……🎵 “お姉ちゃんからは、色々なものをたくさんもらったなぁ……” 🎵まぼろしにかわる🎵 “結局、何一つ返せれなかったけど……” 🎵苦くて淋しい涙でいっぱい🎵 “でも、私、思うんだ” 🎵サヨナラはいつも……🎵 “もしもお姉ちゃんが生きてたら” 『…………』 🎵言葉にならない🎵 “きっと……今より、もっと、もっとたくさんのモノもらっちゃって……” 🎵愛なき……🎵 “お返しが大変なんだろうなって” 🎵子供のような……🎵 『エヘッ…』 🎵慕情……🎵 いたずらっぽい笑みを《姉》に向ける “きっと私、返せれないよ……今以上にね……” ふっと―― 笑ったその後に “きっと……そうだよ” 笑みが段々と―― 『…………』 真剣な表情に変わっていく “だから……これ以上、もらうのは……” そっとバッグに手を伸ばす “これ以上もらうのはね……” バッグから《姿》を表したものは―― 『…………』 一つの封筒 “これ以上もらうのは……” 『…………』 〈ジージー……ジー……〉 “辛いんだよ……” その封筒に記された文字を無表情に眺めていた 『…………』 開けようともせず――
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!