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〈ブォーーン〉
《『今日は海の日ですけれども皆さんいかがお過ごしでしょうか?』》
ラジオの声がやけに大きく聞こえる車内――
『いやぁ~ホント熱いねぇ~茅崎さん』
ハンドルを握りながら、運転席の男――辻堂は、いかにも暑苦しそうに助手席に顔を向ける
とは言え、車内のクーラーが効果テキメンのため、やや説得力に欠ける
『そうですね』
深い意味もない同意をする助手席の――海。
《『天気もいい感じですよね~こんな日はやっぱり海水浴でしょうか?』》
『にしても、さすが連休だなぁ~混んでるし』
『そうですね』
《『R.N.夕陽さん――「せっかくの海の日なのに今年は海に行けませ~ん(泣)」そうですかぁ~そんな人もいますよね』》
先ほどから、どうもメリハリの無い会話が続いている
《『それじゃあ、そんな夕陽さんのリクエストにお答えしましょうか!』》
『…………』
目の前の赤信号が車を止まらせる
《『GReeeeNで――「遥か」です』》
『…………』
『…………』
🎵窓から……🎵
『あのさ、茅崎さん今日、ちょっとメーワクだった?』
🎵流れる景色 変わらない🎵
『……え?あっ、いや、そういうんじゃないですケド……』
🎵この街 旅立つ🎵
『…………?』
🎵春風 舞い散る桜🎵
『なんてゆ~かなぁ……どうしたらいいのかなって?』
🎵憧ればかり強くなってく🎵
『…………』
🎵どれだけ……🎵
『これって、そのォ~』
🎵寂しくても 自分で……🎵
『…………?』
🎵決めた道信じて、🎵
『デートってヤツですか?』
🎵手紙の最後の行が……🎵
『……そうだけど……?』
あっけらかんと答える辻堂
🎵あいつらしくて笑える🎵
『そうなんですか!?……いや、さっきからなんか……私が聞いてたのと違うなって……ヒロ兄ちゃんも合流する様子ないし』
『江島センパイ?合流?……何の事?』
『え!?』
信号が青に変わる
〈ブォーーン〉
『どういう事です?』
『ん?あれ?おっかしいなぁ~』
『?』
『俺はただ、今日は茅崎さんと二人っきりだって、江島センパイから言われたんだけどなぁ?』
『……………!?』
海はハッとした
と、同時に――
“………ヒロ兄ちゃんめぇ~”
こみあげてくる怒り
『まぁ~いいじゃんいいじゃん』
『…………』
『茅崎さん怒ってるの?』
『…………少し』
『そ、そう……俺は良かったけどなぁ~実は』
『…………』
『…………』
🎵さようなら……🎵
『あっ、俺、この曲好きなんだよな』
🎵また会える日まで 不安と……🎵
『……………』
🎵期待を背負って🎵
『……………』
🎵必ず夢を叶えて🎵
『茅崎さんってGReeeeN好き!?』
🎵笑顔で帰るために🎵
『あんまり……聴かない』
🎵本当の強さ🎵
『ウッソ!?GReeeeN聴かないの!?』
🎵本当の自由🎵
『……………』
🎵本当の愛と🎵
『じゃ、じゃあ~……茅崎さん、どんな歌手が好きなの?』
🎵本当の優しさ🎵
『………サザン………』
『え……?』
🎵わからないまま🎵
『サ・ザ・ンです』
🎵進めないから🎵
『あっあぁ~………サザンねぇ~シブイねぇ~』
🎵「自分探す」と心に決めた🎵
『……悪いですか?』
『いや、あのぉ~いいよ~サザン!俺も好き、あの夏ってカンジがいいね~』
『…………』
『でも~解散しちゃったしな』
『…………』
『ホント残念だったよな』
『……解散じゃなくて……活動休止です……』
『……ん?』
『…………何でもありません………』
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