EP.1 海の日のドラマ〜素敵な未来を見て欲しい〜

5/8

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ
『――もしもし!?』 ケータイをかけながら世話しなく夕暮れの繁華街を歩く海 電話の相手は―― 『――ヒロ兄ちゃん!?ちょっとどーゆーコトぉ!?』 江島(えとう)ヒロシ 『今、どこにいるの!?――』 居場所を探るのだが、海、自身、薄々察しはついていた 『やっぱりね……ちょっとそこで待ってなさいよね!』 〈ピッ〉 いきおいよく電話を切る “……ヒロ兄ちゃんのバカ……” 足音のリズムが小刻みにピッチを上げる 『…………』 “私の気持ちも……知らないで……” 不思議と目がしらが熱くなってくる “…………” 何故だか分からなかった こみあげてくる怒りと同時に心の奥底が震えて、目元まで濡らしてしまいそうになるのだった―― “…………” 居酒屋『ちゃこ』名古屋店―― 海は、その店の引き戸を開ける 〈ガラガラガラ〉 店内には、数名の客がいる 『いらっしゃ~い』 流れるBGM―― 🎵Ah はじまりを祝い……🎵 探し人は、容易に見つかる 🎵歌う最後の唄🎵 カウンター席に座っている背中――紛れもない―― 🎵僕は今手を降るよ🎵 “いた――ヒロ兄ちゃんめ~” 🎵Ah 悲しみにさよなら🎵 歩み寄る 🎵疲れ果てて足が止まるとき🎵 すぐ近くまできても気付かないヒロシ 🎵少しだけ振り返ってよ🎵 ビール片手に、鳥の唐揚げをほおばっている 🎵手の届かない場所で……🎵 〈バン!〉 カウンターのテーブルを思いきり叩く海―― 🎵背中を押してるから……🎵 『!?……海ちゃん……もう来たの!?』 『ヒロ兄ちゃん!一体どーゆーこと!?』 『………あれ?辻堂と一緒じゃなかったのか』 『はぁ~』 海は溜め息をつきながら、ヒロシの隣の椅子に腰かけた 『辻堂さんとは、少しお茶して別れた――』 目が完全に怒っている 『……へぇ~そうなんだ』 『そうなんだ、じゃない!!私だって今日、ホントは友達と予定があったんだよォ!?それをさぁ~キャンセルしてまで行ったんだよ』 『じゃあ~その分、楽しんでくれば良かったじゃん』 『だから、私は――ヒロ兄ちゃんが来ると思ってたから――』 『俺が来るのが……なんか意味あるの?』 『――え!?』 🎵Ah 旅立ちの唄🎵 ヒロシの言葉に躊躇する海 🎵さぁ どこへ行こう?🎵 『別に俺がいなくても楽しめたんじゃない?』 🎵また どこかで出会えるね🎵 『いや……その……だからね……辻堂さんとは、まだそんなに面識が無いし……』 🎵とりあえず「さようなら」🎵 急にしどろもどろになってしまう 🎵自分が誰か忘れそうな時……🎵 『とにかく!私を騙したんでしょ!?それがゆるせない!!』 🎵ぼんやり想い出してよ🎵 『……まぁそれについては悪かったよ、ホントゴメン』 🎵ほら 僕の体中……🎵 『…………』 『…………』 🎵笑顔の君がいるから🎵 『もぉ~!私もビール飲む!!』 『おいおい未成年だろ。よしとけって』 『…………知らない!』 ソッポを向く海 『…………』 〈コトン〉 海の前にグラスが置かれる 🎵背中を押してるから……🎵 『…………』 なおも無視する海 やがて 〈カチーン〉 『……冗談だよ……海ちゃん誕生日おめでとう』 🎵でも……返事はいらないから🎵 『…………!』 ハッと振り向く 『……ヒロ兄ちゃん……』 グラスを持ち上げ笑っているヒロシがいた―― 🎵🎵 『あっ』 『あっ』 二人とも声を揃える 店内に流れるBGMが―― 『サザンだ』 聴き覚えのあるBGMになっていた
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加