0人が本棚に入れています
本棚に追加
……ごめんね、わたしの手、まだ短いし、上手に動かせないの。それにね、まだ力もあまりないんだ。だからママ、わたしは足を使うしかないの。ちょっとお行儀悪いかもしれないけど、許してね。
それとね、ママ。
わたし、バレリーナにはなれないよ。わたしはわたしであって、ママじゃないから。
ママがなりたかったものにわたしがなっても、ママはきっと満足できないと思うんだ。
ママはママになりたくて、お兄ちゃんを産んでくれたんだよね? ママになりたいから、わたしがママのなかに入るのを許してくれたんだよね? わたしたちを――選んでくれたんだよね?
だったらそれ、わたしも同じだよ。わたしもママを選んだの。ママの子になることを、自分で選んだの。きっとお兄ちゃんだって同じだと思う。
わたしはお料理が上手なママをすごいと思うし、自分もママみたいになりたいと思っているんだ。
わたしがママの体の中から出て、手足を上手に動かせて、言葉を話せるようになったら、まずはママとおままごとをしてみたいって思っているんだ。もちろん、お兄ちゃんも一緒にね。
そして、お仕事がお休みのときには、お父さんもまざって遊んでもらうの。4人で仲良くおままごとができたら、すごく楽しそうだよね。
そして、わたしが小学生になったら、ママのお手伝いをしながら、少しずつ料理を学んでいきたい。そうしていつか、自分だけの手で、ママみたいに美味しい料理を作れるようになりたいんだ。
その料理を家族みんなに食べてもらって、おいしいって言ってもらえたら、わたしとっても幸せな気分になれると思うの。
いつか結婚して、子を授かったら、その子が丈夫に育つように、今のママみたいに体にやさしい料理を作ってあげたい。
その子が無事生まれてきてくれたときのために、栄養たっぷりの母乳をあげられるような体にしていきたい。
おいしい離乳食を食べてもらって、すくすくと成長していくその子といっしょに、わたしもまた成長していきたい。その子に教えられながら、ステキなママに成長したい。
それがわたしの大切な夢。
最初のコメントを投稿しよう!