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ママはそんなの当たり前のことであって、「夢」なんて位置付けるのはおおげだだっていうかもしれない。でも、違うんだ。当たり前って、手に入れるの、案外難しいものなんだよ。なくなってからじゃないと気づけないものなんだって。
これはね、わたしをママのところへ導いてくれた神様が教えてくれたことだから、きっと間違いないよ。
今はまだ実感できないかもしれないけれど、でも、ママならきっと、そのことに気づいてくれると信じてる。そしていつか、いっしょにひとりだち、できたらいいよね!
カチッカチッという音が聞こえてきたから、そろそろクラシック音楽が鳴り始めるのかもしれない。
パソコンの前にふたたび腰をおろしたらしいママのお腹に向けて、わたしは思い切り足を投げ出してみたのだけど、足先がわずかに届かなかった。
けれども、どうしてなんだろう、ぷつんというかすかな音が鳴った途端、ほんの一瞬、視界が真っ黒になって、小さく耳に届き始めていたクラシック音楽が消えてなくなったんだ。〈了〉
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