4人が本棚に入れています
本棚に追加
僕の中には爆弾が埋め込まれている。
敵軍を殺すためだけに作られた。
僕は爆弾人間だ。僕は3号機だった。
そう、「3号機」。人間じゃないんだ。
人体を完全に改造された僕は「機械」なんだ。
その時、世界では戦争が起きていた。
敵軍を大量に殺すために作られた兵器がこの「人体型核兵器ーBー1224」だ。
当時敵軍では、そのまま殺さずに独房に入れ、相手の状況を聞き出していた。
だから俺らのような爆弾の埋め込まれた人間を送り込み、捕まったところで爆発させる。
そんな作戦だった。国にとって1人の命より国の勝利の方が大切だったらしい。初代爆弾人間の1号は命を犠牲にしても、国の役に立てることを誇りに思っていたらしい。尊敬すべきなのか、、、今でもわかっていない。
2号のことはよく知らないが、2号がいなくなった後に敵軍の人数が減ったと言うことを聞いた。2人はちゃんと責務を果たしたんだ。
けど僕は、、、
爆発しなかった。
独房に入れられた。
僕の人生は奴らにめちゃめちゃにされた。
だから全部喋ってやった。
僕の国の兵器、爆弾人間、人数、などなど
僕は生かしてもらえた。
けれど独房に入れられたままだった。
いつ爆発するかわからないからだ。
時は流れた。戦争は終わった。
結果は僕らの国の負けだった。
敵軍の勝因は僕の告発によるものだった。
はっきり言ってバカだなー、と思った。
勝利の為に、1人の人生をめちゃくちゃにし、けれど爆発せずに、告発され、負けた。
自業自得だ。
僕は解放された。戦争も終わったし、好きにしろって事だ。これはこれで酷い。
久しぶりに見る街。みんな生き生きとしている。
けれど僕の苦労はここからだった。
僕の体内に爆弾頑張るや埋め込まれていることは知れ渡っていた。
恐らく奴らがばらしたんだろう。負けたら今度は復讐のつもりか?ホントにバカだ。
だから僕は避けられていた。
店に入ろうとしても断られ、みんなこっちを見ながら何やら話してるし、目があっただけで逃げていく。
僕はもう、いらないのかな。
人間兵器にされ
独房に入れられ
いらなくなったら捨て
解放されても差別
もう散々だった。もういっそあの場で死にたかった。
送り込まれて爆発。
しなくてもせめて殺して欲しかった。
働きたくても働けない。
どうせ飢え死にするだけなんだ。
悲しくなった。会いたかった。家族に
僕が生まれてすぐに父さんは戦争に、母さんは敵軍に殺された。僕は保護された。
いや、保護なんかじゃない。実験動物となったんだ。
そこで僕は体に爆弾を埋め込まれた。
だから母さんと父さんの記憶なんてほとんどない。
けど、あったかかった母ちゃんの手。
おっきな父さんの体。
今でもはっきりと覚えている。
死んだら会えるのかな?
こんな僕も天国に行けるのかな?
そんなこと考えながら、なんとなく一日を過ごす。生きた心地もしないままに。
最近では散歩が日課になった。今日もいつも通りsea town parkを歩き、海を見る。
透き通った綺麗な色。
それが鮮やかな太陽に照らされ。
輝いて見える。僕もこんな風に輝けたらな。
なんて思って、、、
すると声をかけられた。人と喋るのは何年ぶりだろうか。相手は同じくらいの年の女性だった。表情からして困ってるようだった。
「すいません、mountain sky cityってどこかわかりますか?」
普通に聞かれることなんてなかなかないから少し驚いてしまった。過去にトラブルになった事もあるので、念のため聞いてみる。
「僕、爆弾人間ですよ?」
「え?けど人間じゃないですか。」
初めてだ。普通の人間として扱われたのは。
「えーと、mountain sky cityでしたら、そこを右に曲がったとこです。」
「ありがとうございます!あ、まだ時間があるな。よかったら少しお茶しません?」
「え、あ、あー、いいですよー?、、」
「じゃあ、そこの店にしましょうか。」
僕は人間と「お茶」なんてした事がない。
とりあえず格好づけて
「これをくれ。」
なんて言ったが慣れてないのはバレバレだ。
お茶を飲みながら僕は聞く。
「怖くないんですか?爆発するかもしれないんですよ?」
「え?、別に怖くないよ。爆発したらその時だし、だからって差別するの許せなくて、」
初めて人間の「温もり」というものを感じた。今まで物同然と扱われてきた僕にとっては衝撃的だった。
それから彼女とは頻繁に会うようになった。
いつでも彼女は僕を人として扱ってくれた。
それだけで嬉しかったし、彼女といる時はとても楽しかった。
幸せは突然終わる。
幸せが壊れたのはそれからしばらくした頃だ。その頃国では旧政府軍が動き出していた。僕が爆弾人間にされたあの戦争で、政府軍は反乱軍に負けた。政府という存在がなくなり、軍のみとなった。政権は国民全員が持ち、多数決が用いられた。が、その軍には国軍。自衛隊の隊員も多くいた。自衛隊は政府軍に協力している。軍に残った元自衛隊の彼らは、タイミングをみて反乱を起こした。
国は旧政府軍と革命軍に分かれた。
僕を作ったのは革命軍。当然だが、僕は革命軍に入るよう強要された。けど、絶対に入りたくない。爆発を埋め込まれ、いらなくなったら捨て、また必要になったら急に...
考えられない。そんな所に行きたくなんかなかった。だから断り続けた。だがそれは間違いだったのかもしれない..そう知るのはもう少し後のことだ。その後も彼女とはうまくいっていた。僕の生きる希望を彼女はくれた。
感謝でしかない。だが最悪の事態が起こる。
僕との濃厚接触者として彼女は拘束された。
全ては僕を革命軍に戻す為だ。
僕が悪いんだ。せめて恩返しがしたかった。
僕と一緒にいてくれて
僕を人間として見てくれて
僕に生きる希望をくれて
僕の幸せを作ってくれて...
本当にありがとう。本当にありがとう。
僕には爆弾が埋め込まれている。
人を殺す為に埋め込まれている。
爆弾は人を殺す為に作られた。
けれど爆弾って、人を殺すだけじゃないと思うんだ。
大きな音と共に、世界が白く染まる。
爆弾は人を守ることだってできると思うんだ。
僕は彼女が生きているのを確認すると目を閉じた。
恩返しできてよかった。1人の命を守ることができた。
けど天国には行けないな。それでも多くの命を奪ってしまったのだから。
爆弾とかそういうのはそれだけ怖い物だ。
だから願う。戦争というものがなくなりますように。今後、僕のように苦しむ人が生まれませんように。
目を瞑った彼の顔はなんだか微笑んでいるようだった。
最初のコメントを投稿しよう!