みんな誰かの

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「俺がきよちゃんのお母さんだったら、甘えてほしい。」 きよちゃんがグショグショの顔で俺を見上げる。 「頑張りながらでいい。でも弱音も吐いて、ワガママも言って、甘えてくる時もあってほしい。」 「お母さんが辛くなりそう。」 「なんねーよ。きっとそのほうが頑張れる。」 「そう?」 「うん。だってお母さんだぞ。」 きよちゃんが、ズズッと鼻をすすり上げ、ジッと俺を見つめる。俺は眉を上げて「そうだろ?」と微笑む。 「チーフ、ありがとう。」 俺は、きよちゃんの頭をぐしゃぐしゃと撫で回したあと、歩き出す。 きよちゃんが、鼻をすすりながらついてくる。 「きたねーな。」 「ティッシュ持ってない。」 「ほれ。」 ポケットからティッシュを出して渡すと、きよちゃんが鼻をかみながら笑う。 「チーフのポッケは四次元ポケット?」 「んなわけねーだろ。出てくるものがショボすぎる。」 まだグズグズの顔で、きよちゃんがあはは、と笑う。 子どもらしく笑えるじゃん。 俺は、ホッとして微笑む。 きよちゃんと、きよちゃんのお母さんが、ずっと笑ってられるといいな、と思う。 「もし、四次元ポケットが手に入ったらさ、きよちゃんのほしいもの、なんでも出してやる。」 「じゃ、この間のガムがいいです。」 「は?そんなもん今すぐ出せる。」 ガムを取り出して、きよちゃんに投げると、ピョコンと飛んでキャッチする。 「やったー。これ美味しかった。」 きよちゃんが笑う。 可愛いじゃん。笑っとけよ、きよちゃん。 みんな誰かの大切な人なんだろ? きよちゃんだって、そうなんだぞ。 だから、頑張りすぎてないでさ、笑っとけよ。 きよちゃんの満面の笑みを見ながら、俺は強く強く、そう思う。
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