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「だから、お願い。どうか、二人で結婚式に出て」
パンッと小気味よく手を合わせられ、英 カレンと青山 麦人は困っていた。
「こんなこと、恋愛探偵にしか頼めないでしょ。ね、お願いします!」
同学年の柳原 渚にここまで言われても、お節介なカレンですら困った顔をして戸惑っていた。
なにせ、依頼内容が『結婚式を控える兄に脅迫状を送ってきた人を探して阻止してほしい』なのだから。
「俺達に頼むより、親とか兄ちゃんの友達に頼む方が筋だろ」
麦人の意見はもっともだ。
「親なんて、とんでもない。騒ぎになったら、お兄ちゃん、結婚できなくなっちゃう。友達なんて、もっと無理だし」
「なんでだ?」
「それは、その……妹の私が言うのもなんだけど、お兄ちゃんって、めっちゃ遊び人だったんだよね」
「「遊び人!」」
思わず、麦人とカレンは揃って声に出してしまった。
「これまでなら、身内でネタにして笑ってられたんだけど、結婚式前に脅迫状とか、ある意味自業自得なんだもん」
消印もなく届けられたと見せてきた手紙には、〈お前たちに愛を誓わせない〉と書いてあった。
「で、お兄ちゃんは、なんて?」
「覚えがないって、困ってる。一応、言っとくけど、リアルに女の子を泣かせるようなことはしてないんだよ。ただ、距離感がバグってて、勘違いさせるタイプってだけで……だから、お願い、カレンちゃん!」
「ええと、頼ってくださったのに申し訳ないですけど、面識もない方の結婚式に出るというのは、さすがにちょっと」
カレン達が尻込みする理由は、これに尽きた。
「大丈夫。そこは、ちゃんと考えてあるから!」
勢いよく顔を上げた渚は、満面の笑みで作戦を語り出し、その内容を聞かされたカレンと麦人は揃って
「え?」
「は?」
と呆気に取られてしまった。
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