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夢と希望と家庭
自分には才能がある。
そうやってうぬぼれていられたのは、何歳までだっただろうか。
35を超えてしまえば、自分の限界というものが見えてくる。
後から入社した後輩に仕事のダメ出しをされ、積みあがった自己啓発書の高さと自身の身の丈の高さを比べため息をつく。
夢を見るのは寝る時だけで、あとは死なない程度に残りの寿命を仕事に切り売りするだけである。
そんな中で思うのは、結婚と出産についてのことだ。
20代ではそういったことに執着する人間を「固定観念に縛られた」などと見下していた。
けれど35を超えて夢も希望も打ち破れ、寿命と出勤日数と貯金通帳を比べてみる日々が続くと、彼らの合理性が見えてくる。
単純に言うと、夢も希望もない自分のような孤独な35は自分の寿命と向き合うしかやることがない。
けれど、結婚して子供ができれば、夢や希望を子供に託すことができる。
なにより、子供の世話なんて高度で忙しいことをしていれば、自分の将来なんてものに思いを巡らせる精神的余裕なんてなくなってしまうはずだ。
一日一日を精一杯やりがいを持って生きるのに、家庭というのはちょうどよい目標となるのだろう。
よくできているものだと感心するものの。
ニュース高齢者夫婦を息子が殺害などというのを見ると、なかなかうまくいかないものだと暗い気持ちになる。
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