母の呪い

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今日は、珍しくお父さんが家にいるようです。灰子はチョコッと顔を出すと、お父さんにお帰りと言いました。 「灰子!!部屋に行ってなさい!!」  お母さんが物凄い剣幕で怒っています。お父さんが珍しく来ているというのに、部屋に行かなければならないのでしょうか。本当はお母さんのせいで、お父さんに会えないのでは、とまで思いました。灰子は廊下でお父さんの声を聞きました。 「おい、いいじゃないか。最近話してなかったんだし。」 「いいのよ!あなたが疲れてるのに、うるさくしたらいけないもの。」  灰子はお母さんの言葉に傷つきました。お父さんは随分お母さんよりも優しそうです。お父さんがもっと家にいてくれたらいいのに。お父さんがお母さんから守ってくれたら、いいのに。  灰子は、そろそろ女の子として必要なものがいる時期でした。実は、月のものも始まってしまいましたし、体の毛も気になってくるような年になってきました。第一、クラスの女の子は皆オシャレで可愛い服を着ているのに、灰子は穴の空いたTシャツにGパンばかりでした。あるとき、灰子は思い切ってお母さんに言ってみました。 「ねえ、お母さん。私・・・お洋服、欲しい。後・・・け、毛とか剃りたいの。」 「何を言ってるの、ダメよ。」 「何でなの!?」 「まだ必要ないでしょ。高校生ぐらいになったら考えてあげるわ。」 「それじゃ遅いよ!クラスなんて、お化粧してる子もいるよ!お願い、せめて毛を剃りたいの。みんなやってるし、プールの授業も恥ずかしくて、できないよ!!」 「じゃあ、休みなさい。先生には何とか理由をつけていっといてあげるから。」 「そんな!ひどいよ!もう、いい!!」  この時、灰子は自分から部屋に駆け込みました。そして、悔しくて悲しくて、何でお母さんがあんななのか、どうしても分からなくなって、枕を顔に押し当てて泣きました。
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