19人が本棚に入れています
本棚に追加
「あらやだ。」
リビングに入り込んだ直子は、客ではなく、まるで我が家のようにそこらじゅうを歩き回りっては、棚の埃を指につけてふぅっとふく。
言葉にはしないものの、呆れた表情を浮かべながら、無造作に置かれている置物を丁寧に直す直子に、和子は、直子が不快に思うような、とびぬけて明るい声で
「あら、お義母様?一体どうなさったんですか?今日も、また」
直子、紙袋を和子に押し付ける。
あーやっぱりこれか……と和子は心の中で「ちっ」と舌打ちを打つ。
「ほら、ずっとおふくろの味を食べないと、うちのケンくんが、恋しがって実家に帰ってきちゃうかもしれないでしょう? そうしたら、和子さんだって寂しいでしょう、ねえ?」
「ええ、そうですねー1週間に一度しか食べられないなんて、うちのケンくんが、恋しがっても、仕方がないですわねー。ほんと、わざわざお気遣いありがとうございますーおほほほほ」
目を合わせないまま、不気味な笑い声を響かせる二人。
この様子を第三者が見たら、仲が良い嫁姑だと思うのだろうか?
「で、和子さん?」
直子が口火を切った。
「はいぃ?」
和子も臨戦体制。
「あなた、お客様が来たのに、お茶の一杯も出さないのかしら?」
「ああ、そうでした、申し訳ございませんでしたー涼しそうなお顔でしたので、喉がお渇きになられてるなんて、微塵も思いませんでしたからー」
最初のコメントを投稿しよう!