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 他学科の学生かもしれない。また、大学というところはセキュリティが比較的緩く、学生でなくても教室に入ってくることが可能だ。少なくとも私の所属する大学のキャンパスはそうなっている。だから、こういう「モグリ」の聴講生が時々現れることも、全くないわけではない。  しかし…… 「物理学特論」などという科目を、わざわざモグリになってまでも聞きたいなんて、よっぽど変わっている女の子だ。だけど彼女はいつも私の目の前で熱心に話を聞いている。しかも、あまり化粧っ気は感じさせないのにもかかわらず、ルックスが恐ろしいほど整っているのだ。黒髪ロングの色白で、顔立ちは日本人離れする程に彫りが深い。ハーフなのかもしれない。クラスの男子はモーションかけたくて仕方がなさそうにしているが、どうにも経験値が足りない奴らばかりなのか、結局何もアプローチできないようだった。  ただ私は、彼女といつかどこかで会ったような気がしてならなかった。なぜそう感じるのかは分からないが、とにかく気になって仕方ない私は一度彼女と話をしてみたいと思っていた。しかし、なぜか彼女はいつも講義が終わると、そそくさと姿を消してしまうのだ。
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