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父親
式が始まりあんなに緊張していた主人が何食わぬ顔ですまして百合と腕を組みバージンロードを歩いています。
教会の扉が開け放たれ5月の爽やかな風が幸せいっぱいの二人を祝福している様に、百合のベールを靡かせて柔らかな微笑みを浮かべていました。
クライマックスのブーケトスが終わり、参列者達は披露宴会場から続くガーデンテラスでサーブする男性のトレイから思い思いの飲み物が入ったグラスを選び談笑をしています。
主人は一つ一つ中身を聞いて選んでいるので楓が「これにしなさい!」と痺れを切らして渡されていました。
そのグラスを持って私の所に来た主人は「なんか良くわかんないな、今の結婚式は」とぼやいでいます。
「でも、堅苦しくなくていいじゃないですか」と私は返しながら笑いました。
会場に入ってからの披露宴も和やかな雰囲気で、途中からガーデンに出て自由に会話をしたりして時々が経ち、いよいよ終わりが近づいて来ました。
ちょっと変わった最後の挨拶は新郎、新婦が両親に感謝の言葉を向けてくれた後、それぞれの父親が返事をするという流れです。
主人の番…。私達はドキドキしながら見守っていました。あんなに探してた挨拶の紙を握りしめ…。
「娘を宜しくお願いします」と…。
「「「えっ?それだけ?」」」
あんなに探していた紙に書いてあったのってそれだけ?と私達は呆気に取られました。
私は花束を受け取った時の嬉し涙が一気に引いてしまいました。
参列者の方々を見送り無事結婚式は終わりました。
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