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「一緒にいたいの」
理沙の言葉が、心に刺さった。
そして、今度こそ俺は、理沙の言葉の本当の意味で理解したのだと思う。帰りが遅くなるときに見せる寂しげな顔、マンションの話を切り出したときの浮かない表情。
それは全て俺が作り出したものだった。俺が理沙のためと思ってやったことと、理沙が望む幸せの形は違っていた。
もっと一緒にいればよかった。見栄なんて張らず、ただ自分の気持ちのままに理沙のことを愛していればよかった。そうしたら、今の理沙は今以上に笑っていられただろうか。
言葉の百分の一も伝わっていない気がして、だから俺は理沙の手を握った。手を握ったら全てが伝わればいいのに、と思った。大きな目で理沙は俺を見上げる。
「ずっと一緒だよ」
とりあえず、今週末は思い出の公園に二人で手を繋いでいこうと思った。弁当とビニールシートを持って。何が正解なのか、俺たちはどこに向かっているのかはわからないけれど、そうしたら、また、無邪気な二人に戻れるような気がした。
「離さないでね」
理沙の声が温かくリビングに響いた。
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