唐菖蒲

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「後ろの方のページ破れちゃっててさ、続きがわからないんだよね。クライマックスで凄くいい所なのに……」 なるほど、そういう事か。しかし、なんだって後ろのページだけが、綺麗に破かれているのだろう。 「なんでこれ、後ろだけ破れてんだろ。どう見ても故意に破ってるよね。」 妹よ、代弁してくれてありがとう。 「お兄ちゃんがやったの?」 妹よ、兄を疑わないでくれ。 「僕が台本にそんなことするわけないだろ。だいたい、そんなことしたら書いたやつに怒られるよ。」 そう、台本を蔑ろにすれば、書いたやつがブチギレる。それが我が部の日常だった。 ある日、部室に台本を置き忘れた1年生が、台本を書いた3年生に滾滾と説教された上に校庭を20週走らされたというのは記憶に新しい。 その1年生は、ペナルティの疲れからか、また台本を置き忘れてしまい、翌日同じペナルティを課せられていた。まったく、哀れな奴だ。 置き忘れただけでそれなのに、ましてや台本を破くなど、するはずがない。 「ま、お兄ちゃんなわけ無いよね。そんな度胸ないし。……でも私じゃないよ?」 アヤメじゃないなら一体誰だと言うのか。
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