唐菖蒲

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「まさか、ケイスケ?」 ケイスケと言うのは、我が家で飼っている猫のことだ。漢字で鶏介と書く。 因みに、名付けたのはアヤメである。 猫に鶏と名付けるセンスは、我が妹ながら独特であると言わざるを得ない。 「鶏介ではないだろ……」 いくらなんでも、猫がこんなに綺麗に紙を破れるはずがない。 「まさかねぇ……」 どんなに考えても謎は深まるばかり。そもそも犯人はなぜ台本を破ったりしたのだろう。 「……懐かしいなぁ。これ。私とお兄ちゃんが唯一共演した劇だし、すごく楽しかった。」 「そうだっけ。どんな話だったか、すっかり忘れちゃったよ。」 アヤメは途中まで読んで内容を知っているはずだが、僕は全くと言っていいほど内容を覚えていない。 妹と共演した恥ずかしさのせいだろうか。 「お兄ちゃんは勇者だったんだよ。それで、私が勇者の敵の魔女でさ……」 そう言ってアヤメは物語のあらすじを語り始めた。
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