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「本当は、知ってたよ。だって、お兄ちゃんの最後の言葉は、破られたページの裏だった。」
アヤメの頬に涙が伝う。
だけど、アヤメが流す涙の温度は、僕の手にはわからない。
「じゃあね、お兄ちゃん。」
あれからどれだけの時が経っているのか、僕にはわからなかった。
だけどアヤメが、もうとっくに子供を終えていることはわかっていた。
「私は、行くよ。だから……バイバイ」
最後の挨拶をして、アヤメは僕に背を向けた。
あの時の僕より、少し大きくなったアヤメの背中を見ながら、物語の結末を反芻した。
結局勇者も魔女も、葛藤の末の答えを見つけられないまま死んでいく。あの台本はそんなバッドエンドの物語だった。
だけど、
今、ここにある物語は、どうやらハッピーエンドを紡げそうだ。
僕には『勇者』にはもう無理でも、アヤメは、『魔女』はきっと、優しい物語を紡いでくれる。
そう思えば、僕もやっと、眠れそうだ。
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