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男の名前は泰三、IT企業の課長をやっている55歳超エリートサラリーマンだ。
18年前に妻と結婚したのだが、喧嘩の毎日が続いて離婚をした。娘のカレンが10歳の頃だった。
カレンは私が引き取った。散々辛い思いをしてきたカレンには非常に申し訳ないことをしたとものすごく反省している。
母親にまだ甘えたい年ごろなのに。
私は娘のために人生を注ごうと決心した。
娘の言うことは何でも聞くし、娘が悪いことをしても自分の責任にして娘を責めることはしなかった。
結果、娘はお嬢様的人間に育ってきた。のはずだが
自ら勉強に励み、公立の高校に通い、アルバイトもやっている。とても真面目な娘なのである。
娘は洗濯物を一緒に入れても怒らない子だし、悩みがあるならちゃんと私に相談する
反抗期の年頃を迎えたとしても私と普通に接してくれるのだ。
こんないい娘がいるのか。私は娘のことが大好きなのだ。
カレンが高校3年生になった夏休み、男が家に上がり込んできた。
彼氏ができたとカレンからの報告があった時、私は物凄い衝撃を受けたが、いつかはこの運命がくるのだと確信はしていた。何なら、中学生のころからずっと
「男ができるのではないか。。」と一人で悩んでいたのだ。
その男の名前は達樹。
身長はものすごく高くて、日本の高校生男児の平均をはるかに超える大きな少年である。
眼鏡をかけており、体系は細い、見た目からも弱弱しい陰のキャラな感じが漂っている。
容姿は悪くない方である、実は一部の女の子から人気がある男子高校生だと恋愛アニメに出てくる隠れモテモテ眼鏡キャラであろう。
中年のおじさんが何を語っているのか。。
達樹君は非常に礼儀が正しい男の子だ。
カレンの部屋の掃除まで手伝ってくれるし、買い物も一緒に行ってくれる。
達樹君のおかげでカレンの部屋の掃除をしなくて楽なんだが、小さいころのアルバムを眺めながら掃除をするあの頃が懐かしいと思ってしまう。
どこか心の中にポカっと小さな穴が開いて、悲しい気持ちにもなってしまう。
以降、達樹君は毎週の土曜日に家へきて遊ぶようになった。
私はカレンが好きな人だから、カレンと同じように優しく甘えて接してあげよう。
そう思うと、私は土曜日の昼にカレンと達樹君の三人で焼き肉店に行くことにした。
すると、驚いた。
食べ放題とは言え達樹君は物凄い量の肉とご飯をものすごい速さで食べている。
細い体系とは裏腹にこんな大食い選手のようにガツガツ食べるんだ。
確かに、大食い選手は太っている人よりも痩せている人の方がよくテレビで目にするし。
達樹君のガツガツ食べている姿を見ていると本当に美味しく食べている息子を見ているようで自分も嬉しくなった。
「達樹君、よく食べるね。家でも暴飲暴食なのかな?」
私は質問すると
「まぁ、そんな感じです。」
少し落胆的な返事が返ってきた。
私は何か間違いなことを言ってしまったのだろうか。
空気が悪くなってしまった。
私が何とか先ほどの空気を取り戻すべく話を変えようと焦り始めた。
「そういえば、、」
「達樹は家に帰れないんだよ」
カレンが間に入ってとんでもないことを言い始めた。
「急にどうした?カレン」
私はデリカシーの欠片もない娘に対してやけに強気な態度で返した。
カレンはびびりもせずにグラスの水いっぱいをグビグビ飲み始めた。
何か表情には険しさを感じる。
夜のテレビでよく流れるビールのCMを見ているかのようで本当に美味しそうに飲んでいる。私もビールを飲みたくなってしまったが今日は車で来ているので仕方ない。
ふぅ。
カレンは落ち着いた表情に変わり
「達樹は昔両親に捨てられた過去がある。今はバイトを掛け持ちしているけど、収入は月6万程度。二日に一回兄が経営しているネカフェで特別に朝まで泊まらせてもらっている。
食費も毎日出せるわけないから、三日は断食することだってある。
今日は二日目の断食。だからこんなにガツガツ美味しそうに食べているんだよ。」
達樹は箸を動かすのをやめて
「すみませんでした。」
頭を下げて謝る達樹。
「本当は、もっと前に言うべきだったんですけど、、このタイミングで話そうってカレンの方から提案してくれたんです。」
「カレンの方からなのか。。」
本当に優しくて可愛い自慢の娘だ。父親であることを誇りに思う。
達樹君は涙を流しながら頭を下げ続けている、私はその姿が見るに堪えない。
そして、小さな頭の上にそっと手を置き、優しく撫でた。
「俺の家に来るかい?」
「行きたいです、、」
息継ぎできることが精一杯で、その声はとても苦しそうな涙声だった。
「よし、今日からうちの家族だ、飯食うぞ、飯――!」
我が家に新しい家族が増えました。これからは賑やかになりそうです。
達樹君が家族に加わり、三か月が経った。
私はいつも通りに仕事を終え、電車で家に帰る。
「今日は達樹君が来て、三か月だから家ですき焼きでもするか!」
達樹君は内緒でカレンにだけ個人のLINEで送った。
しかし、何分経っても返信が来ない。
変だな、今日はアルバイトの日ではないし、学校も終わっている時間帯なのに。
きっと、達樹君と映画館デートをして楽しんでる最中だ。
デートの時間を邪魔してはいけないな。
私はスマートフォンの電源を切って眠りに落ちた。電車内のシートは座り心地がとても良くて仮眠には最適なのだ。
しばらくして、目が覚めた。
ここはどこだ。
確認してみると最寄り駅も三駅過ぎている駅に到着してしまったようだ。
寝過ごしてしまった!!
電車が発信する前に急いで電車内から出ていく。
年を取ったせいかすぐに息が切れてしまった。
次の電車は7分後か、昔は田舎暮らしだったから電車の本数も少ないし、乗り過ごしたら終わりみたいな経験を思い出して、都会は電車もすぐ来るし本当に便利だなという回想そしていた。
電車がそろそろ来る時間帯になった時、階段から見覚えのある男が上ってきた。
達樹君?
達樹君だ!
手には缶コーヒーを持って、何だか顔の表情から元気がない、いや、何か失望しているのではないかととらえた。
「達樹君!どうしたのこんなところで?」
「泰三さん、、さっきこの駅から近くて美味しいラーメン屋さんに行ってたんですよ。
味噌ラーメン。最後の晩餐にしてはとても美味しかった。涙出ちゃいましたよ(笑)」
薄ら笑いで意味深な言葉を吐く達樹。しかも何か酒臭い。
「最後の晩餐?何言っているんだ?」
「僕、あなたの娘さんを瓶で殴って殺しちゃいました。」
。。?こいつは何言っているんだ。クスリでもやっているのかと疑問に思う。
「何っているんだ?達樹君。本当にカレンを殺したのか?
そんなこと、するはずがないだろう君が。」
私は冷静に質問をする。
「じゃー、証拠を見せてあげますね。」
達樹は上着のファスナーをおろして脱ぎ始めた。
すると、胸元に血が付いた白いTシャツが。
私は声を失った。
「すみません、泰三さん。カレンと初めて喧嘩をしたんです。
つい、カッとなって瓶ビールで殴ってしまいました。
そしたら、一瞬にしてカレンが倒れて、、
ふと、殴って数秒経ったときにやっと正気に戻って、急いで救急車を呼びました。
でも、カレンは息をしていなかった。多分もう死んでいる。
僕、本当にクズですよね」
一番線、電車が参ります。アナウンスが入る。
「お前、そんな事したら許されてると思ってんのか!!」
今まで出したことない怒号がホーム内に響く。
私は胸ぐらをつかみ、いっそ殺してやろうかと思う目で達樹を見る。
それでもポケットに手を突っ込んでいる。こいつはサイコパスだ。
ガタゴト、ガタゴト。電車近づいていく。
「胸ぐらつかまれたらコーヒー飲めないじゃないですか。
このコーヒーとても好きで最後に飲もうと思ったのに、まぁいいやあげますね」
少し馬鹿にしている調子で言われ無性に私は腹が立った。
電車はもうすぐ近く、
達樹に拳が降りかかる瞬間、達樹はポケットに隠していたカットナイフで泰三の左腕を
切り裂いた。
泰三は腕を抑え、崩れ始めた。
その隙に達樹は線路の上から飛び降り電車に轢かれた。
あまりにも一瞬の出来事だった。
ホーム内には血が飛びついて、達樹の肉片も転がっている。
本当に死にやがった。私は右手で左腕を抑える。
目立ったような出血ではなくて良かった。
そんなことはどうでもいい。
「カレンは?無事なのか?」
私は病院まで無我夢中で走った。
頼む無事でいてくれ、頼む頼む。
運よく、徒歩10分の病院内に運ばれたおかげで早く着くことが来た。
「あのー、、はぁ、高校生の女の子が運ばれて、はぁはぁ、今どこにいますか?」
息を切らしながらも受付の人に質問する。
「手術中だと思います。」
手術室の前で私は祈りながら待つことしかなった。
待つこと数時間。
手術中のランプが消え。手術が終わったらしい。
医師が出てきた。
「娘は、娘は無事ですが!?」
泣きながら必死になっていた。
「娘さんは、、」
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私の名前は泰三、IT企業の課長をやっている55歳超エリートサラリーマンだった。
18年前に妻と結婚したのだが、喧嘩の毎日が続いて離婚をした。娘のカレンが10歳の頃だった。
あー、娘のカレンかそうだもうこの世にはいないんだ。
どうやって生きていたらいいのだろう。
私は生き場所を目指していた。ただ、家でテレビを見ながら酒を飲む日々
「あなたの〇〇卒業は何ですか?ということでやってきましたこのコーナー・・」
よくわからん番組を無関心に見ていた。
俺の卒業。。
親バカかな、、へへ。
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