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「……ここには、お前しかいないのか?」
そう聞けば、男は眉尻を下げ「申し訳ございません」と頭を下げる。ということは、みんないなくなってしまったのだろう。俺のせいか? そうだな、いつも怒っていたような気もする。あいつらにもひどいこともしたような……。
あいつら? そうだ――。
「犬を、飼っていたはずだが……」
番犬、とでもいえばいいのか。2匹いたはずだが、その姿はどこにもない。
「そうですね、彼らはもうここにはおりません」
命あるものはいずれ死ぬ。それが世の理だ。彼らの最後を覚えていないのが、とても残念で仕方ない。
「……そうだ、海が」
そう、私の目の前には大きな海原があったはずだ。
「そうですね、もうここにはありませんけど」
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