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「彼が私に頼みに来たのです。あなたをもう一度祀ってほしいと」
「……それで、その童は?」
私の質問に、男は悲しそうな顔で首を振る。きっと、あの童も黄泉へと行ってしまったのだろう。人の命は、神よりもさらに儚く短いのだから。
「御神体として鏡をお持ちしました。どうか」
彼が取り出した鏡に映る私は、ひどく痩せ艶もなく、薄汚れた老人のように見える。そうか、私は長い間ここに打ち捨てられていたのだな。
それでも神であることを捨てなかったのは――。
「よかろう、そなたに任せる。あの童がお前に頼んだのなら大丈夫、なのだろう?」
そういうと、男はほっとしたように私を見て「勿論です」と笑った。
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