私は誰?

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私は誰?

「覚えていますか?」  目の前には男がいた。全く知らない男だ。だから「いや」と小さく答えると、彼は落胆するように肩を落とした。なんて失礼な奴だ。 「名前すら分からないとは、重症ですねぇ」  名前? 私の名前を聞いたのか? それなら――。 「私は、……?」  何だった? 名前? 何だこれは? 記憶が全くない。これが世にいう『記憶喪失』というやつか?  なら、目の前にいるのは『医者』というやつなんだろう。年は30前後、背は高いな。それにしても『医者』らしくない姿だ。  ん? 私は『医者』を知っているのか……。 「何か、覚えていることはありませんか?」  自分のこと。そう言えば、いつも周りにいたものたちがいない。あれだけ騒がしかったのに、今は目の前に一人だけだ。
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