3. 新しい君ひとつ

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「だってエッチしてる時に名前呼びたくなったら どうすんの? 死神!とか…変でしょ?」 死神の顔がみるみる赤くなる。 「なんかないの?あだ名みたいなの…」 「……ナイ」 今度は泣きそうにったので、俺はあわてて 話の方向を変えた。 「…あー!じゃぁいいや!俺が適当に名前つける」 「ホント?」 今度は笑った。 いちいち感情が態度に現れてペットみたいだ。 そう…犬みたい…。 「タロウ!」 適当に決めるな!と、怒るかな?と 死神の顔を見た。半分冗談で言ったのに 死神は口の中でタロウ…と小さくつぶやいた。 「俺、タロウ!」 満面の笑みで俺に飛びついて来る。 抱きつかれた俺は驚いて声も出なかった。 「名前うれしい、ありがとう!」 そんなに喜ばれたら胸が痛い…。 適当に犬みたいな古風の名前つけてしまったのに。 「あ、いや…やっぱりタロウは変かな…? もっと別のにしようか…えーっと…なんだろ」 まずい…全然浮かばない。 カッコつけすぎなのも変だし、芸能人の名前とか? 口ごもる俺を見て死神が呟く。 「タロウでいいよ…考えてつけられるより パッと浮かんだ名前でいい」 「 …… そう?」 本人が良いというならいいか…。 「俺も晃太って呼んでいい?」 「…どうぞ」 なんかこの会話ちょっと前もしたな…。 「晃太」 「はい」 「晃太」 「なんなのよ」 「…晃太…キスしていい?」 俺の肩に手を回したまま、視線を落として 目も合わせず、聞いてくる。 「…どうぞ」 俺が顎を上げると、タロウはじっと俺の唇を 見つめて、ゆっくり顔を近づけた。 ぎこちなく、そっと、優しく唇が触れあう。 肩に回されたタロウの手から緊張が伝わってくる。 すぐにまた唇が離れて、タロウはホッと ゆっくり息を吐いた。 俺の方からもう一度唇を重ねて 軽く唇を吸ったらタロウの体がピクッと震えた。 ほとんど触れあっただけのようなキスなのに タロウはうっとりと熱っぽい目で俺を見つめた。
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