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母さんが働き始めておよそ半年が経った。最初の頃は今までの生活パターンが崩れて喧嘩ばかりだったけれど、どうにか落ち着いてきた。
「母さんね、幸運の女神って呼ばれてるのよ。いいでしょ」
夕食を食べながら嬉しそうに話し始めた。
「お仕事始めてお客さんから、当たりました、ありがとうってよく言われるのよ」
「そんなに当たるものなの?」
「んー、まぁ、五万円以内だな。それでも母さんが働き始めてからちょっと数が増えたみたい」
「それで女神って呼ばれてるんだ」
「そうなのぉー」
女神にしては年を取りすぎてるけど、本人が気に入っていることだし余り言わないようにしておこう。
「それでもうすぐ始まるジャンボ宝くじの初日が大安吉日だからシフトに入ってほしいって」
「女神大人気だな」
僕は食事を終えて食器を重ねて手を合わせる。
「ご馳走様。今日もおいしかったです」
女神にお礼を言って食器を台所に持っていき、自分の部屋に帰った。女神がジャンボ宝くじを販売するころ僕は試験期間中だ。また小言を言われるのが嫌なのでせめてそこそこの点数を取らないと。そう思って机に向かい、気が付くと夢の中だった。
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