夜のサボり

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 昨日と同じ時間に行こうと思っていたのに道に迷って、結局公園に着いたのは予定の十五分遅れだった。それでも彼女は昨日と同じベンチで同じラベルの発泡酒を飲んでいた。違っているのは服装が紺のジャケットからベージュに変わっていただけで、もしそれすらも同じだったらきっと僕は寝てないのではと勘違いするだろう。  居ないと思っていた彼女と気持ちが通じ合っているようでうれしくなった。にやける口を堅く結びながら僕は彼女の方へ歩いて行った。 「こんばんは」と声を掛けると彼女がぱっと顔を上げた。 「こんばんは。今日も来るとは思わなかった」 「迷惑でしたか?」  彼女は首を横に振って隣の空いている板を軽く叩いて見せる。僕は肩にかけていた鞄を下ろして彼女の隣に腰を下ろした。今日はまだ飲み始めたばかりなのか、さわやかな香りが漂う。昨日は普通に話せたのに、意図して話そうとすると言葉が続かない。黙っている僕を見かねた彼女が「はい」とビニール袋から缶を渡してきた。昨日と同じ赤色のラベルだけど麒麟は描かれていなかった。 「今日はコーラだから君も飲めるよ」  無邪気に笑う彼女が輝いて見えたけど、昼間みたいに目を細めることはなかった。
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