夜のサボり

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次の日は朝から雨だった。 体育でバレーボールをしている時も、バイトの時も彼女のことを考えていた。きっと彼女はいつもより少しおしゃれな格好で軽いスキップをしながら仕事をしていることだろう。そしてゆったりとしたジャズが流れているようなレストランで素敵な彼とグラスを合わせる。今日はあの公園に行っても彼女はいない。だからバイトが終わったらまっすぐ家に帰ろう。  そう思ってたのに、気づけば僕はいつもの公園に足を進めていた。もうここに来ることが日課になっていた。雨の日の公園はさらに闇に包まれて淋しさに満ちていた。傘に当る雨音を聞きながら公園の中へ入った僕の脚がぴたりと止まった。  どうして、なんで……。  雨脚が強いために周りの声が聞こえない。でも、目の前からすすり泣く声だけが耳に流れてくる。僕が傘を持った腕を伸ばすと、ようやく彼女が顔を上げた。 「雨だから、来ないと思ってた」  予想通り、いつもより可愛らしい服がぐしょ濡れで彼女の小さな肩にのしかかっている。いつからいたのか、彼女の顔は蒼白としていた。 「なんであなたがここにいるんですか。彼氏さんと会うんじゃなかったんですか」 「もう無理って言われた」  雨の中、消え入りそうな彼女の声だけが響く。 「本当の私が分からないんだって。私、彼の前でも頑張ってたのかな。本当の私って、どんな人なのか、自分でももう……」  顔がくしゃくしゃになっていく彼女を見るのが嫌で僕は傘を捨てて彼女を優しく抱きしめた。思った以上に彼女の体温は雨と悲しさに奪われていた。 「風邪ひくんで、とりあえず家に来てください」  隣り合わせの頭がこくりと頷いた。
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