遅刻

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遅刻

 朝、起きた。  九時……。  九時!?  もう高校の授業が始まってる頃じゃないの! 何やってるんだ、私! 急げ、私! 「食パン食べなさいよ~」  母の声が聞こえる。 「今そんな暇じゃないの! なんで起こしてくれなかったのよ~」 「食パンを食べないと学校には行かせません!」  何よ、子供の危機だっていうのに。  仕方ないから食パンを持って外に出た。  走れ! 走れ! 私は食パンを口にくわえながら無我夢中で走った。  バーン!! 「いったーーー!」  何かにぶつかったらしい。なんでこんな大事な時に……。そう思って前を睨み付けようとした、その時。 「大丈夫ですか。」  キラーン。  そこには美しい青年がいた。  ワカメのようになびく髪の毛。パプリカのように上がったこうかく。どれをとっても素敵な青年だった。  それが、私の青春の始まりであった。  三年後。 「ジュンヤきゅーーん。あ、そ、ぼ」 「いいよ、ミカたん」  私はあの時出会ったジュンヤきゅんと毎日遊んだ。ドッジボールをして遊んだ。来る日も来る日もドッジボールをして遊んだ。 「これで私の五十勝目ね。」 「強いな、ミカたんは。僕なんかまだ一回も勝ったことないのに。」  私たちはこのような他愛のない会話をして楽しんだ。そしてこの思い出は忘れることなどないだろう。  十年後も、二十年後も。  [完]
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