20人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
遅刻
朝、起きた。
九時……。
九時!?
もう高校の授業が始まってる頃じゃないの! 何やってるんだ、私! 急げ、私!
「食パン食べなさいよ~」
母の声が聞こえる。
「今そんな暇じゃないの! なんで起こしてくれなかったのよ~」
「食パンを食べないと学校には行かせません!」
何よ、子供の危機だっていうのに。
仕方ないから食パンを持って外に出た。
走れ! 走れ! 私は食パンを口にくわえながら無我夢中で走った。
バーン!!
「いったーーー!」
何かにぶつかったらしい。なんでこんな大事な時に……。そう思って前を睨み付けようとした、その時。
「大丈夫ですか。」
キラーン。
そこには美しい青年がいた。
ワカメのようになびく髪の毛。パプリカのように上がったこうかく。どれをとっても素敵な青年だった。
それが、私の青春の始まりであった。
三年後。
「ジュンヤきゅーーん。あ、そ、ぼ」
「いいよ、ミカたん」
私はあの時出会ったジュンヤきゅんと毎日遊んだ。ドッジボールをして遊んだ。来る日も来る日もドッジボールをして遊んだ。
「これで私の五十勝目ね。」
「強いな、ミカたんは。僕なんかまだ一回も勝ったことないのに。」
私たちはこのような他愛のない会話をして楽しんだ。そしてこの思い出は忘れることなどないだろう。
十年後も、二十年後も。
[完]
最初のコメントを投稿しよう!