一の満月

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一の満月

 父の遠吠えが聞こえる。幾重(いくえ)もの壁を越えて届くその声に、私は耳を澄ました。  窓のない地下室から、外の様子は分からない。けれど、今宵は真ん丸になった月が森を明るく照らしているのだろう。  父が遠吠えをするのは、満月の夜だけだ。
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