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その後の満月
ダーーン!
ダァーーーン!
小振りな猟銃は、父のものより少し軽い音がする。私が仕留めたキジが森に落ちていくのを見ながら、父は満足げに深くうなずいた。
「すごいね、ルナ。もう立派な猟師だ」
私に銃を持たせることに猛反対した父は、根負けしてからは丁寧にその扱い方を教えてくれた。真剣に練習したおかげで、数ヶ月後には、私は飛ぶ鳥を二発で堕とせるほどに腕を上げた。
私が射撃を身につけた一番の目的はもちろん、鍋の具のためじゃない。守られてばかりではダメだと思ったからだ。
「ルナちゃん、さすがだなぁ。もうおやじさんより上手いんじゃないか?」
ブラドおじさんが、大きな体を揺らして笑った。
おじさんはあの夜以降も変わらず、この家に家具の注文や野菜を持って来てくれる。彼が家具の部品だと言っていたものは父の猟銃の銃弾だったと、私が知ったのは先日のことだ。
満月の夜に変身してしまうブラドおじさんは、若い頃、熊の姿で罠にかかっていたところを父に助けられたそうだ。以来彼は満月のたびにこの森に身を隠し、私が十歳になってからは父と協力して、月の使者から私を守ってくれていたのだという。
「使う銃弾の量が二倍になったからな、家具をじゃんじゃん作らねぇと破産しちまうぞ!」
おじさんがそう言って、大きな手で父の背中を叩く。バンバンという音が、夕方の森に響いた。
「ちょっと、痛いよブラド。この馬鹿力ならぬ熊力め」
父は悪態をつきながらも、リラックスした顔で笑っている。
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