一の満月

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「ルナちゃーん、今日の野菜だよ」  朝になると、家にブラドおじさんがやって来た。彼が持っていると、野菜のたくさん入った籠がやけに小さく見える。 「あれ、おやじさんは?」 「お父さんならまだ寝てるわ」 「もうすぐ昼じゃねぇか、全く。俺がズドンとやって起こしてやろうか」  おじさんが猟銃を構えて父の部屋を撃つジェスチャーをしたので、私は笑った。彼はこの森に一番近い町に住んでいて、父とは私が生まれる前からの付き合いらしい。 「じゃあさ、ルナちゃん伝えといてくれ。机と椅子6脚の注文が入った。納期は一ヶ月で頼むと」 「分かったわ。素材はカラマツでいい?」 「そうだな、カラマツがいいだろう。ルナちゃんももう十二歳か。大きくなったもんだ。ついこの間まで、こんなおちびさんだったのに」  おじさんは目を細めて、小さかった頃の私の頭をなでるように、下向きにした手のひらを振った。  父は木工職人で、自分で伐ったこの森の木材を使って家具や小物を作っている。父の作るものは評判が良く、最近は町に売りに行かなくても、ブラドおじさんが注文を預かってきてくれるようになった。 「あとこれ、裏の罠にウサギがかかってた」 「ありがとう! 後でさばくわ。今日は美味しい鍋ができるわね」  差し出された獲物を受け取ると、紐で脚を括られたウサギがじたばたと暴れた。 「へぇ! もうルナちゃんがさばいてんのか?」 「だってお父さん、かわいそうだって言って自分でやりたがらないのよ」  そう言うと、おじさんは巨体を揺らし、声を上げて笑った。 「あいつも狩りの腕はよかったのに、すっかりヘタレたな。今じゃ寝坊助(ねぼすけ)優男(やさおとこ)だ」
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