0人が本棚に入れています
本棚に追加
兄妹の章
「お兄ちゃん、本当にこの道であってるの?」
暗い、暗い森の中、小さな兄妹が月明かりを頼りに進んでいく。
「あってる……はず。わからない、けど進むしかないよ。」
そこにはもはや、道と呼べるものはなく、2人は鋭利な草木で肌を傷つけながらひたすらに前へ進む。
「お兄ちゃん……もう、歩けないよ……」
妹は泥まみれになった自らの足を見ながら言う。
「頑張って。あと少しのはずだから」
兄は見えもしない希望を見ながら言う。
「お兄ちゃん……」
再び妹は口を開く。しかし、兄の有無を言わせぬ表情に、妹のつぶやきは靄となって消えていった。
暗い、暗い森の中。
己の道を失った小さな兄妹のおはなし。
最初のコメントを投稿しよう!