魔女の章

1/1
前へ
/11ページ
次へ

魔女の章

「腹が減った」 魔女は待っていた。 「……腹が、減った」 魔女は獲物を待っていた。 「誰か……」 だけれどここは、深い深い森の中。 「何か、来ないか……」 魔女の求める獲物など滅多に来ない。 「人間が食べたい」 魔女の獲物は人間だった。 「どうせなら柔らかい子供がいい」 魔女の好物は子供だった。 「……不便な体だ。」 魔女は魔法が使えたが、なぜだか自分の食べるものだけは、魔法で出すことができなかった。 「こんなものも、私にとっては木の板同然」 魔女の家は、キャンディーの城。子供が好きな、甘いお城。 「なんだって人間は、こんなものを食べるんだろう。」 だけども魔女にとって、キャンディーは食べ物ではないのだ。 「嗚呼、腹が減った……」 深い、深い森の奥。 獲物に飢えたはらぺこ魔女のおはなし。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加