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魔女の章
「腹が減った」
魔女は待っていた。
「……腹が、減った」
魔女は獲物を待っていた。
「誰か……」
だけれどここは、深い深い森の中。
「何か、来ないか……」
魔女の求める獲物など滅多に来ない。
「人間が食べたい」
魔女の獲物は人間だった。
「どうせなら柔らかい子供がいい」
魔女の好物は子供だった。
「……不便な体だ。」
魔女は魔法が使えたが、なぜだか自分の食べるものだけは、魔法で出すことができなかった。
「こんなものも、私にとっては木の板同然」
魔女の家は、キャンディーの城。子供が好きな、甘いお城。
「なんだって人間は、こんなものを食べるんだろう。」
だけども魔女にとって、キャンディーは食べ物ではないのだ。
「嗚呼、腹が減った……」
深い、深い森の奥。
獲物に飢えたはらぺこ魔女のおはなし。
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