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大人の章
「どこに行ったの?」
母親は探していた。
「子供たちは森の奥に?なんてこと!」
そして、知ってしまった。彼女の夫の残酷な望みを。
「可哀想な子供たち。」
彼女の子供は夫の連れ子。愛しく可愛い双子の兄妹。
「私はただ……」
彼女の願いは、優しい願い。
「ただ、子供たちを……」
優しくて、それでいて残酷な。
「子供たちを、苦しめたくはなかったの。」
飢饉の苦しみも、何もかもを、愛する双子から遠ざけたかった。
「苦しめるくらいなら、いっそこの手で……」
愛しい、愛しい子供たち。
「空腹に喘ぐより、森で野犬に襲われるより、その方がずっと、ずっと幸せだったろうに。」
彼女の想いは届かない。夫の耳にも、ましてや双子の心にも。
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