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兄妹の章
「どうしよう、お兄ちゃん」
囚われた兄妹は絶望の中。
「大丈夫、大丈夫。きっと逃げ道があるよ。」
兄の言葉は自らに言い聞かせるように。
「無理だよ。私は、できないよ。」
妹の言葉は自らを否定するように。
「できるよ。僕の言う通り、やってごらん。」
兄は妹を唆す。優しく、文字を教えるみたいに穏やかに。
「でも……私怖いよ。本当に大丈夫?」
妹は兄に問う。或いは己の道筋、運命を。
「大丈夫だよ。いいかい?僕はヘンゼル、君はグレーテル。怖い魔女に立ち向かう、勇敢な兄妹だ。」
兄は語り始める。これから紡ぐべき物語を。
「私は……グレーテル……」
妹は必死に兄の言葉を飲み込む。
『さあ、物語のはじまりはじまり』
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