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「どういうことなの!?」
家に帰り着くなり、『NOAH』に連絡した。
話が違う。
私は息子を完璧に複製するように言った。それなのに、私のもとにやってきたナオヤは、直哉ではなかった。だけど彼らの答えは……
「彼は直哉さんのデータから復元した複製ですが?」
「どこが!」
ナオヤを直哉の部屋まで連れて行くと、しばし部屋を見回して、頷いて言ったのだ。
『情報通りです。これならばすぐにプラン通りに過ごせそうです』
直哉として成長し、直哉としてこの家で過ごすことを、プランと呼んだのだ。
「まるで機械じゃない。直哉はあんな風じゃなかったわ」
「落ち着いてください。こちらで出来る限りのラーニングは施しましたよ。直哉さんの好み、食べ物の好き嫌い、身に着けていた技術、学校での成績……これらの情報をすべて708番には植え込んであります」
「植え込むですって……?」
「それが現段階で我々にできる限りの複製です。親子のやりとりなどの細かい部分は、そちらでご調整頂けますか」
まるで話にならない。
眩暈を覚えながら電話を切ると、ノックが聞こえて、ナオヤが顔を覗かせた。
「お母さん、電話は終わりましたか」
「ええ、まぁね」
「ではお茶にしましょう。帰宅したら、そうするのが習慣だと教わりました」
『教わった』と言った。外から帰ったらまずお茶を飲んで一息つくという、私と直哉の蓄積された思い出は、ただの”知識”として飲み込まれてしまった……。
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