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光と影
草木も眠る丑三時、小さな影がすぐ近くで蠢いていることなどつゆ知らず、寄り添う男女は二人して幸せな夢を見ながら、スーピーと鼻息を鳴らしている。
口元から垂れる安眠のよだれに誘われるように、影はもぞもぞと動き、一本足りない川の字にゆっくりと近づいていく。
ぺたっ、ぺたっ。
床に一瞬吸いつく肌の音と、漏れ出るような吐息が、音のない寝室に響く。
今晩は雲一つない満月。
小さな影の主は無垢な光に照らされ、その痩せ細った体をこれ見よがしに曝けだした。
それはそれはひどい、痩せようであった。
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