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ペコペコ
ペコがかわいい爪で地面を引っ掻く。
トントンキーキー。
ペコがモールス信号を刻むと、街にやってくる音楽隊より楽しいショーがはじまる。
おっと、ペコはたまに噛みついてくる。猛獣よろしく尖った牙でも、偉人が詩に残すような三日月よりも美しいから、止めはしない。
それにしても随分大きく育ったものだ。昔は小さかったのに。せいめいのしんぴ!
「ごはんをくれよ。ごはんをくれよ」
ついにわたしの気持ちまで読めるようになったのか! ペコがわたしの思っていることをそのまま口にだしちゃった!
「ごはんをください。ごはんをください」
ペコはすごい。敬語だって使える。
「おなかすいたよ」
うん。わたしも同じ気持ちだよ、ペコ。
「ごはん、ないの」
かわいいね。ごはんはないよ。
「わかった。じゃあ、さよなら」
うん。今日は久しぶりに会いにきてくれたのに、ごめんね。だけどペコはわたしと違ってたくさん友だちがいるから、きっと大丈夫だね。
わたしもペコみたくかわいかったら、もっと大きくなれたのかな。
小さいままでも、せいめいのしんぴ、かな。
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