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「今日は悪かったな」
「別に。揶揄ってるわけじゃないことは分かった」
「聞いてもらえて、助かったよ」
「本当に聞いただけだけどね」
困ったように眉を下げる彼は、いつもの自信満々に笑う彼とは別人のように見えた。とはいえ、隣のクラスで別に親しくもないので話したこともなかったし、元々僕のイメージとは違っていたのかもしれない。
それでも、いつも明るいからこそ、こんな変なことを話せる奴なんて周りにいなかったんだろうとも容易に想像がつく。普段から馬鹿騒ぎしかしないような集団の中で、こんな話をするタイミングなんてどこにもなかっただろう。
「まあ、中々面白かったよ」
「俺は面白くなんてねーけどなー」
そう言って軽く手を振れば、少しだけ恨めしそうな声が返ってくる。
「何かいい案が浮かんだら声かけるよ」
目の前の彼が本当に信じているのなら、こういう一言が気休めになるかもしれない。「あんま期待しないで待ってるわ」そう言って家の中に入っていった彼の背中は、心なしか身長よりも小さく頼りなく見えた。
「さて。それで君は、僕に何が言いたいのかな?」
玄関の門から先に入らず、僕の隣に立つ小柄な影に向き直る。
小学校中学年くらいの、本当に小さな女の子。小柄に見えるだけの中学生というわけではない。その背にはピンク色のランドセル。この子は、見た目だけでなく、本当に小学生なのだ。
図書室の時から、その子は彼の隣にいた。いいや、もうずっと前から彼と一緒にいるところを僕は見てきている。だから他人に興味がない僕ですら、彼の顔を覚えていたのだ。
僕はたしかに超能力は使えなかった。
だけど、それはあくまで超能力なら、という話なのだ。
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