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「いい?これを良く見て」  翌日の放課後、人気のない空き教室で、紐の先についたガラスの重りをゆらゆらと揺らす。  多分、どうにかできると思うよ。そう声を掛ければ、彼は簡単に着いてきた。騒がしい周りの奴らは、不思議クンと噂されている僕が何の用かと訝しんでいたけれど、他人がどう思おうがどうでも良かった。  静かになったところで、落ち着かせるようにゆっくりと話しかける。 「揺れと、自分の呼吸をあわせて。ゆっくり、吸って、吐いて」  大人しく僕の言う通りにする。何度か深呼吸をさせたところで、ぼうっとしてきた目つきから、もうそろそろかなと判断する。 「後3回呼吸したら、君は小学3年生の事件のあったあの日だ。いいね?」  僕に超能力はない。催眠術なんて、かけたこともなければ、試したことすらない。今問題なく出来ているのは、少女が助けてくれているからだ。 「君はその日、何をしていた?」 「…かくれんぼ」 「死んでしまった女の子も?」 「…うん」 「女の子はどうしていなくなったの?」 「…分からない。遊んでいたら、あの子だけ見つからなかった」  苦しそうに顔をしかめる彼に可哀想だと思いながらも、質問を止めることはできない。こうでもしなければ、彼は探しものを忘れ続ける。 「それは君が探しものを忘れてしまうのと関係はある?」  カーテンを背にして椅子に座る彼の横には、ランドセルを背負った少女がいた。彼らはいつも無表情だから、何を考えているのか表情からは分からない。けれど、ずっと彼のことを心配していたのだろうと思う。  これは少女の望んだことだった。 「…おれが、鬼だったんだ。でも、見つけてあげられなかった」  彼が探していたのは、忘れていたのは、少女のことだった。
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