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 僕が小学校裏の古い家で首を見つけてから数日後、6年前の未解決事件はニュースになった。  ずっと見つからなかった少女の首は剥製にされた状態で飾られていたこと。他にも行方不明になっていた少女たちの首もあったことで、余罪は数え切れないこと。  事件の犯人は、一緒にかくれんぼをしていたという当時の担任の教師だった。 「小3の時の担任がさ、まさかこんな変態だとは思わなかった」 「君はその先生と親しかったの?」 「全然?」  何でそんなこと聞くんだとキョトンとする彼に対し、本当は放課後一緒に遊ぶ程度には親しかったはずだよ、そう言うのは心の中だけに留める。  彼が開けたのか、大きく開かれた窓からは心地の良い風が入ってくる。よく晴れた太陽が、図書室の中を満遍なく照らしていた。そのあまりの眩しさに、思わず目を擦る。 「女の子の方はさ、初恋の子だったな」 「ふうん、そうなんだ」  それが恋愛だったかは知らないけれど、少なくとも、少女も彼のことを好ましく思っていたんだろう。じゃなきゃ、自分を責めて探そうとし続ける彼の記憶に手を加える必要なんてない。   「ところで、どうして君は今日もここにいるわけ?」  最近は本を読む中学生はほとんどいないのか、放課後の図書室はいつも僕の貸切のようなものだった。それが、あれからもう1人利用者が増えたのだ。とは言っても、本を読むわけではなく昼寝をするだけだったけれど。 「よく覚えてないけど、お前のおかげで探しものを忘れなくなった」  日当たりは良いのに、珍しく昼寝せずにこちらを眺めたり話しかけたりしてくるので居心地が悪くなって問い掛ければ、はにかみながらもそんな返事が返ってくる。 「そう。でもそれは、僕のおかげじゃないよ」  僕が感謝されるのは違うだろう。そう思い訂正すれば、眉間に皺を寄せ、不思議そうな表情を隠しもせず聞き返す。 「じゃあ、誰のおかげなんだよ?」 「さあね。君もよく知っている人じゃない?」  まだ何か聞きたそうにしている彼を完全に無視して、読書に没頭するフリをする。それを見て諦めたのか、彼はいつものように鞄を枕代わりにして昼寝をし始める。  窓の外の校庭では、運動部の生徒の賑やかな声で溢れている。その全員が、数年前は同じようにかくれんぼをして遊ぶような子供だったんだろう。  催眠術をかけたあの日から、少女の姿を見かけることはなかった。  少女にとって、自分の首を見つけてもらうことよりもずっと、気掛かりで仕方がないものがあったということなのだろう。
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