水曜日のにおい

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 秋季模試の帰り、涼とマックで答え合わせをした。  涼は中学一年の夏休みに、隣町のニュータウンに引っ越しをしてきた。中学からクラスも一緒で、同じ高校に入学した。告白したのはわたしの方で、お互い特定の相手と付き合うのは、初めてだ。  くせ毛の涼はコーラの余った氷をガリガリと噛み砕き、スマホで点数を計算している。ニキビを気にしていた涼の頬は、最近調子がいいみたいだ。わたしはポテトの袋にバター醤油味のパウダーを入れ、思い切りシャカシャカと振った。  志望校の合格ラインギリギリの涼は、頭を抱えている。わたしたちは志望校も一緒だが、学部だけ今回は違う。涼が経済学部、わたしは文学部だ。  氷がなくなったLサイズのカップが、トレーの上でふやけいてる。スマホを閉じた涼は、わたしの答案用紙を覗き込んだ。 「みのりはA判定なのか。俺、かなりヤバい」 「まだ本番まで時間あるよ。過去問やろう」  頬にかかる髪を耳に掛け、わたしは参考書を開いた。バスケ部だったわたしは、卒部後に髪を伸ばし始めた。ショートだった髪は、今は肩にかかるボブの長さだ。  わたしたちはいつもマックで窓際に座る。頬杖をついていた涼が、ふとバス通りに目を向けた。
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