戸惑いのキスから鬼ごっこ

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「奏人くんは何買ったの?」 「フリスク。それより今日忙しかった?」 「ううん、大丈夫」 二年生に上がる直前のタイミングで、奏人くんは塾に通い出した。 進学校ではあるけれど、難関校を目指す子は受験塾に通うみたいだ。 部活ではニ年生でありながら副部長に抜擢され、体育会委員の仕事が加わって、6月末に開催される体育会の準備に明け暮れている。 昼休みは部活のミーティングと練習で、放課後もまた部活で、その後は塾に直行。 おかげで一緒にいる時間は以前に比べて減ったけれど、塾のない日は決まってバイト終わりに会いに来てくれていた。 「ちょっと寄ってく?」 彼が指さしたのは、ジャングルジムと滑り台、そしてブランコしかないこじんまりとした小さな公園。 家から徒歩5分ほどの距離にあり、帰るまでの間、ブランコで少しだけ話をするのが日課になりつつあった。 「私はいいけど…疲れてない?大丈夫?」 「全然。超元気だし」 副部長として朝練に力を入れてると遠藤くんが愚痴をこぼしていたのを聞いてるだけに、翌朝のことを考えるとお迎えなんて控えた方がいいのだろうけれど。 陽光みたく燦々とした屈託のない笑みに、どうしても引き込まれてしまう。 雑草の茂った柵を通り過ぎ、空いたブランコの横木に座った。 スカートにできるだけ皺をつけずに座るのも、初めて来た時よりかは、だいぶ慣れた気がする。
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