戸惑いのキスから鬼ごっこ

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「明日は各運動部がリレー参加者の名簿を提出するついでに最終打ち合わせ。あ、部活別リレーの話な」 「奏人くん出るの?」 「英吉に押し付けた」 「えっ、どうして?」 「バレー部が陸上に勝てるわけがない」 「勝ち負けなんか別に良いのに…」 「良くない。負けるとことか死んでも見られたくないし」 活躍してる姿が見たいだけで、結果なんて本当に気にしないのにな。 男の子は、やっぱり負けず嫌いなんだろうか。 「それじゃ走らないのか…」 「クラス別では出るけど、しずに見られたくないかも」 「な、なんで?」 「万が一負けたらどうすんだよ。でも勝ったら見てほしい、そんで褒めて」 結果を見届けなければ勝敗なんて分からないのに、なんて無茶振りだろう。 ひとまず笑いそうになるのを堪えて、クラス別リレーは何があっても見届けようと思った。 「しずは今日どうだった?」 「楽しかったよ。あ、あとこれ…紀子さんに、なんだけど。いつものお礼にコースター編んだの。お茶が好きって聞いてたから……」 忘れないうちに鞄に忍ばせていたプレゼントを取り出すと、彼は拗ねたように口を尖らせていた。 「俺には?」 「え?」 「俺もなんか欲しい。しずが作ったもの」
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