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「…リクエスト、ある?」
「ない。しずがくれるもんならなんでも嬉しい」
どうして恥ずかしげもなく、こんな事をさらりと言えてしまうんだ。
おかげで胸中が急に揺れだして、ドドドッと瞬く間に血流が早まっていく。
物に不自由してない相手に何を贈ればいいのか。正直、コースターも死ぬほど悩んだ。
すでに持ってるんだろうなって考えがどうしても先行してしまって。
自分が贈った物が負担になってしまうんじゃないか、そもそも必要ない物なのではないか、といった具合に膨れ上がっていく懸念が積極性に制限をかけてしまうのだけど。
「わ、わかった。なんか作る」
そう答えると、奏人くんはブランコを離れて私の前まで来て、正面向かいに身を屈めた。
「約束な?」
と言って、彼は小指を突き出してくる。
こういうところが可愛いな、って思ってしまうから私の心はいつも忙しない。
「楽しみにしてる」
「……プレッシャーだよ」
「はは、大袈裟」
おそるおそる自分の小指を差し出すと、指の長さの違いがすごく顕著で。
握りしめたブランコの鎖は変わらず冷たいせいだろうか。悪戯っぽく微笑んだ彼のぎゅっと引っ掛けてきた小指が灼けるように熱く感じる。
「奏人くんって体温高い?」
「……そうか?」
「うん、前から思ってた」
「暑苦しい?」
「……ううん」
何度も胸が焦がし、痕を残してきたこの温度は、むしろ愛おしいくらい。
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