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再入院
私の眩暈の原因は脳腫瘍の再発だった。MRI検査の結果、左側頭葉の記憶中枢内に直径三十ミリもの腫瘍が確認された。
「三カ月で、これだけ大きな脳腫瘍に成長している。このまま放置していると生命維持にも影響が出る。直ぐに治療に入るべきだ」
主治医の竹本先生が深刻な表情でそう告げてくれた。
「先生、入院を一週間後にする事は出来ますか?」
先生が大きく首を横に振っている。
「前回、抗癌剤と放射線治療では脳腫瘍を完全に取り切れなかった。だから今回は手術が必要だと思う。申し訳ないがこのまま入院してもらう」
つまり私は『飛行人間コンテスト』に参加出来ないと言う事だ。
「先生、分かりました。難しい手術になりそうですか?」
先生が私を真剣に見つめている。
「腫瘍は脳の深部だ。最新のPDTを使うが、成功率は……五十パーセントと考えて欲しい。それと成功しても記憶中枢の手術だから君の過去の記憶が失われる可能性が高い。勿論、最善は尽くすつもりだ」
半分の成功率には驚きはなかった。でも成功しても記憶が無くなっちゃうかもしれない。山本先輩の記憶もかな……。その時、私の胸がキュンと痛んだ。
「先生、一つだけお願いがあります。一週間後の試合の結果を見て、手術に臨みたいです。それまで手術を待って貰えますか?」
先生は複雑な表情で頷いてくれた
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