忘れたくない想い

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忘れたくない想い

 コンテストの前日、山本先輩が私のお見舞いに来てくれた。  ベッドを起こして私は先輩に声を掛けた 「先輩、明日、頑張って下さいね。私、テレビで応援してます」 「ああ、ありがとう。高倉さんのお陰で新型プロペラが間に合った。君の為にも、そして弟の為にも、世界記録を出してみせるよ。そして君の手術の成功も祈っている」  彼の素敵な笑顔に、私の胸の鼓動が高まっている。この気持ち忘れたくないけど……。 「ありがとうございます。でも記憶中枢の手術なので成功しても……先輩のこと忘れちゃうかもしれません。その時はごめんなさい」  その言葉に彼が驚いた様な表情を浮かべている。そして大きく首を左右に振ると、突然ベッドの上の私を抱きしめた。 「えっ? や……山本先輩」  私の頬は彼の固い胸板に押し付けられている。 「忘れてしまうなら言わせてくれ。僕は高倉さんのこと好きだ」  心臓の鼓動が跳ね上がって頬が火照ってる。でも私はとても嬉しかった。彼の腕の中で大きく頷く。 「……私も大好きです。先輩。この想い、忘れたくないです……」  その時、私の頬を涙が流れるのを感じていた。
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