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ハッと目を開いた。天井の照明が眩しい。見渡すと左腕の点滴が見える。
「そうか、病室で抗癌剤の点滴を……」
私は癌の治療の為、半年前から入院していた。頭の中の脳腫瘍は、放射線治療と抗癌剤でほぼ撲滅出来た事が昨日の検査で分かっていた。だから今日の抗癌剤の投与を最後に退院して、明日からは普通の生活が送れるって先生が仰ってた。
残念だけど高校は留年することになっちゃったし……、それに……。
ベッドの横にある鏡を見つめる。
「髪の毛、抜けちゃったな……」
そこに写ったのは黒髪が抜けて窶れた顔の女の子。でもね、死神に勝って、これから元気になるんだから!
その時、病室のドアがノックされた。急いでニット帽を被る。
「はい、どうぞ」
ドアが開くと長身の男の子が入って来た。彼が私に笑顔を向けて声を掛けてくれる。
「高倉綾さん。ねぇ、僕のこと覚えてる?」
ーーー
そう、この男の子とは六ヶ月前に会ってたの…。
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