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リアルゲーム
2050年。とある有名ゲーム会社が、とんでもないゲームを開発した。
それは、人間が実際に、ゲームの中で生きているのだと思い込んでしまう
スーパーリアルゲームだ。
ゲームにログインすると、正に、これまでの記憶から、
うまくゲームにつながって、ログアウトしたときに、
やっと自分がゲームをやっていたことを思い出す。
モニターでは、ゲームの中での、あまりのリアリティーに、
記憶を消去したいという申し出が続出したために、
任意で、記憶を消去するシステムを構築する。
記憶を消去したい理由の第一位は、これだ。
ゲームの中で、新しく自分の中に生まれた価値観を、
消し去りたい━━というものだ。
ゲームの中での価値観は、大抵、現実世界にそぐわないものだ。
災害に飲み込まれただの、巨悪と戦うだの、
人はそんな経験をもし、実際にすれば、人生観まで変わってしまう。
それと同じ状況が、擬似的に起きてしまうのだ。
それは、ゲームが、リアリティーを追求しすぎた結果の
必要悪だった。
そのゲームの販促として、とある芸能人が、
モニターとして参加することになった。
ゲームの共戦相手を選ぶときに、やらせではないことの
印として、ランダムに選出した。
その相手は、ただの普通の女子高生だった。
勿論、本人には、そのことは、知らされていない。
ゲームの内容は、大災害が起きて、
参加者が、無人島に流されて、サバイバルしていく内容だ。
携帯電波も入らない。勿論、テレビもラジオもない。
何も外の情報が入ってこない。
もしかして、自分の居た世界の人々が、大勢亡くなっているかもしれないし、
何が起きているか、さっぱり分からない。そんな状況だ。
製作側は、芸能人がゲームの中での本音や
他の参加者とのやりとりを映像記録して、
その素晴らしい部分を、販促に使うつもりでいた。
そのゲームの中に入れば、芸能人は、
このゲームでの発言や内容が、外で誰かに聴かれていることなんか
知らない。
結構、やばい本音を言ってしまう。
相手の女子高生も、とんでもないことを言っていたりする。
どうせ、誰も聞いていないんだ!言いたいことを言おう!と、
制作側は、この場面は、使えないな……とつぶやく。
極限の状態だから、お互いに喧嘩になる。
芸能人は、ガキのくせにと罵って、
女子高生は、~~じゃダメでしょ!と生意気な口ぶり。
うんちゃらかんちゃらで、恋に落ちる(笑
二人が、もうこの島で生きていくのもありかもしれない。
と、覚悟したところで、ちょうど、モニターの日数が経過したので、
制作陣が二人をログアウトさせる。
二人は、おのおのの場所で、現実に返る。
芸能人は、しばらくボーっとしていて、
そっか、ゲームだったのか!と我に返る。
怖いほどリアルで、面白かったと感想を言う。
ゲーム内の記憶を消すかどうか、問われたけれど、
大丈夫だと一蹴する。
が、家に帰ってから、色々と思い出して、夜、眠れなくなる。
その後も、四六時中、ゲーム相手のことが頭に浮かんで、
仕事に集中できない。
そして、思わず、相手の女子高生を探してしまったり、
女子高生が住んでいると言っていた町に行ってしまったりする。
実際に、女子高生が通学している姿を見た瞬間、
自分がやばいと初めて気づく。
そこで、制作陣のところにやってきて、
記憶を消してくれと頼む。
でも、できないと言われる。
販促活動をこれからやってもらうのに、
記憶を消してもらっちゃ困る。
仕事が終わるまで、待ってくれと。
一方、女子高生の方は、記憶を消していなかった。
ゲームに登場するのは、本物の姿だし、
相手は芸能人だと認識していた。
自分が、モニターに参加した時点で、販促で芸能人が
参加することも有りえると思って、面白そうだと思って、
参加したのだ。
しかし、まさか、自分が選ばれると思わずに、
覚悟みたいなものは、なかった。
口外してはいけない契約があったので、
周囲には、だまっていたけれど、
芸能人のことが気になって仕方がない。
つい、写真を持ちあるいたりして、
ファンだったか?と周囲に聞かれたりする。
女子高生の方は、東京からは程遠い場所に住んでいたので、
芸能人の故郷で、思い出の場所だと、ゲーム内で聞かされた場所に、
足を運んだりしつつ、アルバイトに励んでいた。
その間、ゲームに度々、ログインしていたけれど、誰もいない。
一生懸命、人を探しては、ログアウトを繰り返していた。
制作陣の方は、ログインをしていることと、記憶を消していないことを
知ってるので、後ろ髪引かれてるのかな~と、考える。
本当は、ログインできないのだけれど、販促に使えるかと思って、
わざわざ、ログイン可能なシステムを残しておいた。
それを見て、これは、また販促に使えるとのことで、
芸能人に、またログインするようにお願いする。
嫌だと、断られるが、誰もいないし、短時間だからと
お願いすると、渋々了承。
それで、いつも、女子高生がログインする時間に、
ログインさせるが、本当に、誰もいない。
芸能人の方も、誰かに見られていることを、ゲームシステムのせいで
忘れてしまい、女子高生を探してしまう。
女子高生は、お金を溜め込んだところで、
東京に繰り出していたので、ゲームにログインしていなかった。
芸能人は、ログインしたおかげで、
気分が、げっそりしていた。
また、あの女子高生のことを思い出してしまったからだ。
嫌な仕事だとつぶやく。
今日は、公開映画の舞台挨拶があるから、
気分も変わるだろうと挑んだら、
沢山いる観客の中に、女子高生がいるのを見つけてしまう。
客が大勢居ても、不思議なことに、たった一人の顔が分かるものだ。
思わず、言いよどむ。
女子高生の方も、今、目があった!?と気づく。
でも、こんなに大勢居る中で、気づくわけないかと。
でも、インタビューを受けていたり、舞台上にいる間中、
ずっと、芸能人は、女子高生を見ている。
やっぱり、見られている!?と、思い出す。
終わった後、女子高生は、走って人ごみを掻き分けると、
無理矢理、関係者しかは入れないところに入っていった。
(その時、無人島でサバイバルした何か似た物事を思い出す。
あのゲームの中で、自分は変わったから、こんなこともしてしまう
ことを認識)
控え室?芸能人を見つける。
けれど、冷たく、あしらわれる。
お前は誰だと。
応援してくれるのは嬉しいけれど、
ファンでもルールを守ってもらわないと、辛いな。
とか、月並みの発言をされる。
女子高生は、それを聞いて、
何だか恥ずかしくなって、飛び出していく。
たぶん、あっちは、記憶を消したのだと勘違いする。
しばらくしてから、芸能人も思い立ったように、
その後を追うけれど、もう女子高生の姿はない。
勘弁してくれよと、独り言。
普通に、ゲームのモニターで一緒だったと歓談すれば
済むものの、思わず、記憶がないフリをした自分を、疑問に思う。
ゲームの中でのことは、全部、作り事だというのに、
頭は、そうだと思ってはいない。
だから、気楽に話せるような状況ではなかったのだ。
二人の中では、ゲームの中でのことは、本当にあったことのように、
頭の中で存在している。
次の日の夜、女子高生がログインすると、
既に、芸能人がログインしていた。
「記憶を消してなかったのか」と問うと、「そうだ」と言う。
なんで、「昨日は、覚えてないフリをしたのか」と問うと、
「ゲームの中と現実は、違う世界だからだ」と答える。
「仕事でしばらくは仕方なく、記憶を消せないだけだ。
でも、今に消せるようになる」
芸能人は、「おまえの記憶を消してくれよ」と頼んでくる。
女子高生は、私が記憶を消そうが消すまいが、勝手でしょうと
反発すると、
「お前の記憶が残ってると思うと、辛いんだよ」
「すごくな」と答える。
女子高生は、何か言おうとした後に、
自分の設定したログアウト時間に、自動でログアウトしてしまう。
女子高生は、素直に記憶を消してしまう?
その後、なんだかんだあって、
販促活動が終わるまでの間、いろんなことがある。
付き合っている女性とか、友達とか、業界のもろもろとか。
そこで、女子高生との無人島生活のことと比べてしまう。
気丈な子だったとか、辛いときに優しくしてくれたこととか、
辛い生活ながらにも、楽しいことがあっただとか。
忘れるどころか、段々、記憶が強化されていってしまう。
販促活動も終わって、記憶を消すという段になったときに、
思わず、拒絶をする。
制作にいいんですか?と問われるけれど、
いい! 全然構わない!と答える。
そこで気づく。
ゲームの中でのバーチャルな出来事だけれど、
あの女子高生を気に入ったし、生活を気に入ったのは、
本当の自分の気持ちだと。
制作の人に、女子高生の居場所を聞こうとすると、
それを察していたかのように、
住所をベラベラとしゃべって、メモをくれる。
これ大丈夫なんですか?と後輩に言われる。
無理。ディレクターには、内緒な。と言う。
果たして、女子高生に会いに行くと、
そこには、記憶を失った女子高生がいた。
芸能人は、記憶を取り戻させるために、
無人島での思い出話とか、モニターの話とか、
東京に自分を探しに来た話だとかをする。
でも、女子高生は反応しない。
(この物語で、象徴的な何かをしたときに、
女子高生が、ふっと吹きだす)
そして、「ずるいよ」と一言。
「え?」と問うと。
「自分だって、記憶消してないじゃん」と言う。
女子高生は、記憶を消していなかった。
・・・・というところで、二人は、ゲームからログアウトする。
実は、この話のすべてが、恋愛ゲームのモニターだったのだ。
芸能人は、勿論、販促のための仕事で参加していた。
ログアウトしてすぐに芸能人が、制作陣に、女子高生の住所を
聞こうとしたら、聞く前に、
女子高生の住所をしゃべって、メモで渡す。
芸能人は、外に飛び出していく。
後輩が、「この下り、僕が作ったシーンじゃないですか」
先輩「それを、俺が現実で再現したんだから、喜べよ。
っていうか、ディレクターには内緒な」
で、芸能人と女子高生が会ってるシーンで終わる。
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