ぴんく、ぴんく。

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ぴんく、ぴんく。

「うっそ!?」  棚の中をまじまじと覗き込み、私は悲鳴を上げた。ない。どこをどう探してもない。特徴的なピンク色がどこをどう探しても見つからないのだ、お気に入りだったからしっかりケースに入れて保管しておいたはずだったというのに! 「ないないない!何処にもなーい!」 「ちょっと、姉ちゃん煩い」  私が騒いでいるのに気づいてか、小学生の弟が洗面所から出てきた。まだ髪の毛が濡れているし、パジャマをしっかり着込んで汗をかいている。どうやら、風呂から上がってきたところだったらしい。相変わらず烏の行水もいいところだ、ちゃんと洗えているのだろうか――というのは、気になるが今はそれどころではない。  私は半泣きになりながら、まだ小さな体に縋り付いた。 「翼翼翼ー!姉ちゃんやらかしたかもしれないよおおお、ピンクちゃんが見つからないのっ!」 「ピンクちゃん、って」  私が自分の私物に、あれこれあだ名をつけて管理していることは弟もよく知っている。翼はぽかん、と口を開けて、一言。 「ピンクちゃんって、あれだよな?あの模造品のやっすいピンクダイヤもどきがついた……」 「やっすい言うな!気に入ってんだから!」 「気に入ってんなら失くすなよアホ!!」 「アホ言うな姉ちゃんに向かってえええ!」  いやまあ、アホと言われたら否定はできんのですが。私は自分が引っ掻き回した棚のある方を見つめた。私がピンクちゃんを保管していた棚は、押し入れの中に設置されている。私の部屋の押し入れは下の段に布団、上の段に雑貨を入れているのだ。  棚の中にはお気入りのアクセサリーを中心に保管してあり、棚の横には昔のアルバムなどが所狭しと詰め込まれた本棚がある。下手に触ったら、そっちは土砂崩れを起こしそうだ。まさかと思うか、その中に紛れてしまっていたりするのだろうか。 「整理整頓ちゃんとしておかねーからじゃん」  うげえ、と翼は苦い顔で押し入れを見つめた。 「まさかと思うけど。あの本棚の隙間に入っちまった可能性は?」 「……ない、とは、言い切れない……」 「はぁぁぁぁ!」  嘘だろぉ!?と口の悪い弟は絶叫。
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